東京都人権プラザ企画展 人権カルチャーステーション

治部れんげさん推薦①

フォー・ライフ

フォー・ライフ

理想を語るだけではなく
戦略をもった人権擁護のお手本。

アメリカの刑務所を舞台に、実話を元にしたドラマ。冤罪で終身刑を言い渡されたアフリカ系男性が獄中で学び、司法試験に合格、弁護士になる。自らの潔白を証明するため、再審を求める活動の中で、同じく獄中にいる仲間たちを不当な状況から救っていく。構造的人種差別の中、アメリカで黒人男性が過剰に収容されている実態を伝える。検察官、弁護士、刑務所の責任者など、司法制度や矯正政策に携わる人々の行動を丁寧に描くのが見どころ。理想だけでなく戦略をもって人権擁護を追求する人々から日本で暮らす人が学ぶところも多いだろう。

  • 2020年製作/アメリカ/PG12

  • 製作総指揮:ハンク・スタインバーグ

  • 配給:Netflix

治部れんげさん推薦②

D.P. -脱走兵追跡官-

D.P. -脱走兵追跡官-

「いじめ」を放置する社会の問題と
解決・撲滅の難しさ。

韓国の人気俳優チョン・へインが主演する軍隊を舞台にしたドラマ。主人公は徴兵されて入隊した若い男性。洞察力を買われて、脱走兵を捕まえる特殊任務に就く。脱走兵の背景を探るうち、軍隊内の凄まじい、いじめの実態が明らかになる。軍が本気で脱走兵対策をするなら、暴行事件と呼ぶべき「いじめ」を撲滅する必要がある。追われる脱走兵と追う主人公というドラマの向こう側に、酷いいじめが放置されている韓国社会の問題が見えてくる。シーズン1のラストは、この問題に安易な解決がないことを示すシーンで終わっているところも見事。

  • 2021年製作/韓国/R15+

  • 監督:ハン・ジュニ

  • 製作:SONY PICTURES TELEVISION

  • 配給:Netflix

治部れんげさん推薦③

アンという名の少女

アンという名の少女

誰もが知っている物語に
現代の人権課題を加えて再解釈。

カナダの作家モンゴメリの小説「赤毛のアン」を下敷きにした実写ドラマ。舞台となるプリンスエドワード島、アヴォンリー村の家や風景を美しく描きつつ、現代の人権課題を取り入れて再解釈している。アンが孤児として里親や孤児院で受けた酷い扱いは現代の感覚では児童虐待であること、マシュウとマリラの兄妹に引き取られ、幸せな生活を送るようになってからも、しばしば過去の出来事がフラッシュバックすることが描かれる。アメリカで黒人奴隷が解放されて間もない時期であることを踏まえ、原作にはなかった、黒人やカナダ先住民に対して白人が行った弾圧を描く場面もある。

  • NEPVIDEOアンという名の少女シーズン1~3

  • 2017~19制作/カナダ/G

  • 発行・販売元:NHKエンタープライズ

  • Pelican Ballet. Northwood Entertainment and CBC Commissioned by CBC “Produced under the Copyright License of Beta Film All rights reserved”

PROFILE
治部れんげ
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院
准教授
治部れんげ
1997年、一橋大学法学部卒業後、日経BPにて経済記者を16年務める。2006~07年、ミシガン大学フルブライト客員研究員。2018年、一橋大学経営学修士課程修了。メディア・経営・教育とジェンダーやダイバーシティについて執筆。著書に『ジェンダーで見るヒットドラマ 韓国、アメリカ、欧州、日本』(光文社、2021年)など。
1997年、一橋大学法学部卒業後、日経BPにて経済記者を16年務める。2006~07年、ミシガン大学フルブライト客員研究員。2018年、一橋大学経営学修士課程修了。メディア・経営・教育とジェンダーやダイバーシティについて執筆。著書に『ジェンダーで見るヒットドラマ 韓国、アメリカ、欧州、日本』(光文社、2021年)など。