洋服をきれいに仕上げる
アイロンがけ


奈良県広陵町にある縫製会社株式会社新田。ここではたらく中村さんの仕事は、アイロンがけ。新田では、さまざまなブランドから依頼を受けて、洋服の縫製を行っています。縫製が終わった服はアイロンがけし、畳んで袋に入れ、箱詰めして出荷します。高級ブランドとの取引も多く、アイロンがけは商品の見栄えを左右する重要な工程です。中村さんはアイロンがけを専門として、もう何年もやっています。今では、アイロンがけの中でもより高い技術を必要とする「仕上げアイロン」の担当になっています。
「仕事は好きです。ちょっとイヤなときもありますけど(笑)。難しい仕事になるとイライラしてしまって。忙しいと周りがバタバタしてきて、みんなイライラしてくる。そうすると私もイライラしてきちゃいます。でも、仕上げした服がきれいに仕上がって、畳んできちんと袋に入っているのを見たときは、やっぱり楽しいです」と中村さん。
仕事は、だれかと一緒にではなく、一人ですることが多いといいます。「アイロンがけしているときは音がうるさいので、周りの音が聞こえません。だから、誰かと話すという感じではありません」。それでも、仕事のことでわからないことがあったり、仕上げがうまくいっているか確かめたいときは、近くにいる先輩に聞きに行ったりもします。
「これからは、もっと難しい仕事をしたいです。お給料もほしいですし、やっぱり仕事があったほうがいいです。部屋におるより、みんなと一緒に仕事している方が楽しいです」と中村さん。今の仕事と生活を楽しんでいる様子です。

洋服をきれいに仕上げる「倒し」の技術
「仕上げアイロンで難しいのは『倒し』です」と中村さん。「倒し」とは、服の裏側にある縫い目を、倒してアイロンがけすることです。「倒し」が上手にできている洋服は、表から見てもきれいですし、着心地もいいのです。「服によって左右どちらに『倒す』のかが違います。それを指示通りに、きれいに仕上げなくてはいけません」と中村さん。「仕上げ馬」と呼ばれる、仕上げアイロン用の、丸みを帯びたアイロン台で「倒し」をしたら、さらに平台でアイロンをかけるのですが、そのときにきちんと「倒し」た縫い目の中心があっていないといけません。そこが難しいところです。中村さんの「倒し」の技術が、新田の品質を保っています。

※本記事の内容は2022年8月時点のものです。