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BGMのようなおしゃべりが人気の名物店員

ツジ カツヒロ
辻 克博
カフェベーカリーぷかぷか

神奈川県横浜市の住宅街、霧が丘団地の中に「カフェベーカリーぷかぷか」はあります。辻克博さんは、この店の名物店員。店の扉を開けると、焼き立てのパンの香りといっしょに、朗々と響く声が、耳に入ってきました。レジ横に立ち体を左右に揺らしながら、ときどき何かを暗唱しているように声を出す辻さんに、はじめて来た人は、ちょっと驚くかもしれません。

よく聞いてみると、「メキシコシティ、モンテレイ、アカプルコ、ベラクルス、カンクン…」という内容。この日はメキシコの都市名でしたが、日によってクラシックの作曲家の名前だったり、1980年代の歌謡曲の曲名だったり。その法則は、誰にもわかりません。辻さんの声は、お店のBGMとして定着していて、中には「今日はのってるね~」と声をかけるお客さんもいます。

2010年に開店したとき、辻さんは25歳。そこから仕事を続けて、37歳になりました。12年間でできる業務はどんどん増えて、最近はベーグルの生地をこねたり、クリームをつくったり、パンづくりにも挑戦しています。

お店でやる業務は、ほとんど一通りできますが、唯一、包丁やラップが怖くて(ラップは、ギザギザの刃の部分が怖いんだそう)、それらを使う仕事だけ、きっぱり「嫌」だと断ります。

市役所などお店の外で販売するときには、「外販部長」として準備から接客まで、大活躍。「辻さんがお休みのときは、本当に困るんです」とお店のスタッフさんが教えてくれました。

サブ写真
辻さんの「スゴ技」

あざやかな暗算が得意技

「980円です」。

パンを選び、レジに持っていくと、横から大きな声が飛んできました。実は辻さんは暗算名人。すべてのパンの値段が頭の中に入っていて、レジの人がレジを打ち終わる前に、購入金額を教えてくれます。実はお客さんの選んだパンをよーく見ているのです。ときどき間違えるのもご愛敬。あざやかな暗算は、ぷかぷかのちょっとした名物になっています。

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※本記事の内容は2022年8月時点のものです。