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なんにもできないから、
社長になった

サトウ ヒサム
佐藤 仙務
株式会社 仙拓

「特別支援学校を出る直前になって、あれ、僕、はたらく場所って全然ないんだなっていうことに気づいたんです」。株式会社仙拓の社長を務める佐藤仙務さんは、こう振り返ります。

「僕には兄が二人いますが、二人とも健常者で、働いてお給料をもらっている。初任給でレストランに連れてってくれました。自分も働いて、好きなものを買って、ってするんだろうなって、勝手に思い込んでいたんです」。ところが、特別支援学校の紹介で企業や施設での実習にも行ったが「そもそも自分でトイレもできない、ご飯も食べることができない、職場にも通えない人はいらないってお断りされる。どこにあたってもダメ。自分でネットでいろいろ調べても、結局難しい」。

悩んだ佐藤さんが、同じ難病「脊髄性筋萎縮症」の友人、松元拓也さんと一緒に会社を立ち上げようと考えた。「正直僕も、会社を起こすときはメチャメチャ怖くて、何度もやめようと思いましたよ」。株式会社仙拓を立ち上げ、名刺づくりとウェブデザインをはじめました。

「やってみないと、可能性も希望も出てこない。起業しなかったら、なにもやらせてもらえなかっただろうなとは思います。でも本音を言えば、やれと言われても、もう一回起業はしないかな(笑)」。ただ普通にはたらける場所が欲しかったという佐藤さん。今は社長として、どんな人でも普通にはたらける場所をつくろうとしています。

サブ写真
佐藤さんの「スゴ技」

寝たきり社長の事業拡大術

佐藤さんは、ベッドに横になったまま、吊るしたモニターを見ながら、手元のコントローラーを動かして文字を入力、メールを打ったり資料をつくったりします。寝ながらにしてウェブやSNSを通じてつくった人との「縁」が寝たきり社長の強みです。「社長として活動してみたら、人との出会いとか縁の強さに驚いて。どんどんつながっていくんです」。名刺づくりとウェブデザインからはじめましたが、今ではキッチンカーの運営など、さまざまな領域に事業を広げています。

スゴ技写真

※本記事の内容は2022年8月時点のものです。