ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

本文

電動車いす利用の外国人旅行者をおもてなし!

印刷ページ表示 更新日:2022年2月7日更新

TOKYO人権 第83号(2019年11月25日発行)

コラム

誰もが自由に旅を楽しめる街に 
電動車いす利用の外国人旅行者をおもてなし!

 日本の観光情報を身体に障害のある外国人旅行者向けに、英語で紹介するWEBサイトがあります。サイトを運営するグリズデイル・バリージョシュアさんは、電動車いす利用者の視点から情報を発信しています。来日する電動車いす利用の旅行者に、私たちができることを伺いました。


 日本を訪れる外国人旅行者はこの6年間で飛躍的に増えており、2018年は3,119万人を超えました。来年は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されることもあり、外国人旅行者がさらに増えることでしょう。

 そうした中で、主に電動車いすを利用する外国人旅行者向けに、日本の観光情報を英語で紹介するWEBサイト「ACCESSIBLE JAPAN(アクセシブル・ジャパン)」が注目されています。その特徴は、交通機関やホテル、公共施設などのバリアフリー情報が、電動車いす利用者の視点から紹介されている点です。

 同サイトを2015年に立ち上げたのが、カナダ生まれのグリズデイル・バリージョシュアさんです。

 生まれたときに発症した病気が原因とみられる脳性まひにより、両手足に障害が残ったグリズデイルさんは、4歳から電動車いすを利用しています。初来日は2000年、19歳のときです。丁度、日本では公共交通機関のバリアフリー化を推進する法律が施行されたころでした。「2007年までに数回来日しましたが、そのたびにバリアフリー化が進んでいることに感動しました」と振り返ります。

顔写真
グリズデイル・バリージョシュアさん

 その後、2007年の26歳のときに日本で職を得て移住、2016年に帰化し、現在は東京の社会福祉法人で仕事をしています。

 「アクセシブル・ジャパン」を開設したきっかけについては「日本はバリアフリー化が進んでいるのに、その情報が外国人に向けてあまり発信されていないと感じたからです」と語ります。例えば、駅構内のどこにエレベーターが設置されているのか、旅先に車いすで乗車できる福祉車両があるかなど、日本語のバリアフリー案内はあっても英語版がなかったり、旅行代理店のスタッフが知らなかったりするケースもあるそうです。

 「私は、旅行は人権そのものだと思います。障害者も健常者も同じように“旅行を楽しむ権利”があると思うのです。冒険好きな私の場合は、自分でいろいろな情報を探すことも旅行の楽しみと考えています。でも情報が少ないために不安を感じたり、訪日を諦める人がいるかもしれません。それは非常にもったいないですね」(グリズデイルさん)。

 また、外国人旅行者が困惑する場面として多いのが、電動車いすの種類の違いによる問題です。海外で使われている電動車いすは、バッテリーが大きいため非常に重く、グリズデイルさんのものは130kgぐらいあります。電動車いすの重さに利用者の体重が加わるので、重量オーバーのため公共機関の車いす用リフトに乗らないことがあるそうです。

 ほかにも海外では一般的な「ハンドル型の電動車いす」が、日本では「車両」とみなされて電車に乗れなかったケースもあったそうです。

 電動車いすを利用する外国人旅行者のために、私たちができることとして、グリズデイルさんは「まず自分の街を知ること」を挙げています。例えば、駅の入口やエレベーターや「多機能トイレ」がどこにあるのか、電動車いすで入れそうな飲食店はどこかなど、普段から意識しておけば必要なときに情報提供をすることができます。

 さらに「日本人の柔軟な工夫に期待している」と語ります。「以前、電動車いすのサイズが大きく、飲食店に入れなかったとき、オーナーが店の外に席を作ってくださったことがあります。これこそ“おもてなしの心”だと感激しました」(グリズデイルさん)。

 東京2020大会開催が近づいてまいりました。皆さんも一人ひとりができる「おもてなし」を、今から少しずつ準備してみませんか。

インタビュー/勝尾 栄(東京都人権啓発センター専門員)
編集/小松 亜子

もっと知りたい!

ACCESSIBLE JAPAN

http://www.accessible-japan.com<外部リンク>

都内のバリアフリー情報や多機能トイレの位置などが紹介されています(英語のみ)。


<取材協力>
アゼリーグループ 社会福祉法人江寿会「アゼリー江戸川」

Adobe Reader<外部リンク>
PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)