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若年層の「オーバードーズ(OD)」の現状 ─ 大人はどのように寄り添い・支えられるのか?

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TOKYO人権 第109号(2026年3月27日発行)

特集  

 近年、10代を中心とする若年層の中で、かぜ薬などの市販薬のオーバードーズ(過剰摂取行為、以下OD)が増加(※)しています。こうした行為に走る若者の心理やその背景にはどのような問題があるのでしょうか。かつて薬物依存症だった経験を持ち、現在は依存症に関する啓発活動を行っている、認定特定非営利活動法人ASKの風間(かざま) 暁(あかつき)さんにお話を伺いました。

かざまあかつきさんの写真 風間 暁さん

なぜ若者は「市販薬」を乱用するのか

 若年層のODの現状について、風間さんは以下のように説明します。「違法薬物に対する監視や取り締まりが厳しくなる一方、ドラッグストアの店舗は増え、市販薬は手に入りやすくなっています。ODする若者たちには真面目な子も多いです。『良くないこと』と分かっていながら、彼らは彼らなりのルールの中で一線を越えないよう、合法的な市販薬を使用しているのです。」
 では、ODという行為にどのような意味があるのでしょうか。アンダーグラウンドなカルチャーとしての一面もある一方、家庭や友人間の嫌な出来事を忘れる目的やストレスを軽減する手段の一つだと風間さんは語ります。「若者たちはつらい現実や環境から自分を守るためにODしているのです。」

いきなり「やめさせる」のは逆に危険

 周囲の大人はODを「まずはやめさせよう」としがちですが、風間さんはその対応に警鐘を鳴らします。「彼らはODすることで、自分自身をなんとか支えています。大人が『やめろ』と言って、その唯一の手段を無理やり取り上げてしまうと、心理的にさらに追い詰めてしまうことになりかねません」。
 ODする若者たちの中には大人や社会への不信感が強く、「助けてあげる」という姿勢の支援を受け入れられないケースも多いそうです。風間さんは薬物使用による害の低減を目指す「ハーム・リダクション」という考えにもとづき、無理にやめさせようとせず、使用する薬の量が危険な量であれば数を減らすよう促し、安全な服用方法などを伝えます。「取り上げるのではなく、しなくても楽しい・苦しくないという状況や選択肢を用意することで、やめる動機や目標を見つけられると、自然とODをしなくなっていきます。」

「そばにいる友達」として支える

 では、ODしている若者たちに、周囲の大人はどのように寄り添い、支えることができるのでしょうか。まず、無理に「支援者」になろうとせず、一線を引いて「そばにいる友達」を目指せばいいと風間さんは言います。「当事者が『やめたいな』と言った時に、『一緒に行こう』と言って、精神保健福祉センターなどの専門機関や自助グループに繋げるのが理想です。ただ、本人との相性があるので、もし一度うまくいかなかったとしても、諦めずに何度も別の方法や手段を提示することが大切です。」

ODの先にあるもの

 「彼らの行為は今の社会が非常に『生きづらい』ということを可視化してくれていると思います。」と風間さんは指摘しつつ、ODをする若者たちにこう語りかけます。「こんなにしんどい社会にしたのは大人たちの責任だから、頑張らなきゃいけないのも大人たち。だから、君たちはこれ以上頑張らなくていい。ただ、使う薬の量をひと箱減らして、なんとか諦めずに生きてほしい。」
 若者たちがODに至るには、そうせざるを得ない問題や環境があり、それらは社会全体で取り組んでいかなければならない課題であるともいえます。ODを若年層だけの問題としてみるのではなく、若者たちが生きやすい社会を作っていくことが、いま求められています。

インタビュー・執筆 玉邑 周平(東京都人権啓発センター 専門員)


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※厚生労働省「全国の精神科医療施設における薬物依存症の治療を受けた10代患者の『主たる薬物』の推移」を見ると、2014年には0%だった「市販薬」の割合が2022年には65.2%まで増加している。


 

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