ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

本文

外国につながる子どもたちの学習機会の支援 ―子どもたちを支える鍵としての「多様性」

印刷ページ表示 更新日:2025年1月10日更新

TOKYO人権 第104号(令和6年12月31日発行)

JINKEN note/コラム(2)

多様な背景を持つ子どもたちが安心して成長できる環境づくり

 日本国外にルーツを持つ「外国につながる」子どもたちの学習機会の支援が課題となっています。日本では、日本国籍を持たない保護者に対しては、就学義務はありませんが、公立の義務教育諸学校へ就学を希望する場合、国としては、国際人権規約等も踏まえ無償で受け入れています※1。しかし、不就学または不就学の可能性があると考えられる外国籍の子どもの数は、2023年5月の時点で、8601人と報告※2されています。この数字の背景と課題について、日本語支援を行うNPOでお話を聞きました。

日本語習得における課題

 NPO法人青少年自立援助センターが運営する「YSCグローバル・スクール※3」の担当者は「外国につながる子どもたちにとって、学習の大きな障壁となるのは、日本語能力の不足です。このため、学校での学習や社会への適応が難しくなっているのでは」と分析しています。
 文部科学省の調査※4によれば、2023年時点で、日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数は5万7718人にのぼります。また、両親のどちらかが日本人で日本国籍を持っていても、一定期間海外で暮らすなどで日本語を習得していない子どもたちもいます。
 日本語指導を要する子どもたちの使用言語は多様化しており、住んでいる地域も集住化が確認できる一方、これまで就学年齢の子どもがいなかった地域へも散らばって住む傾向がみられており、地域の実情に応じた対応が進められています。

NPOでの日本語支援

 日本語の授業風景

 これらの問題解決を支援するために、同スクールでは、外国につながる子どもたちを対象にした日本語教育・学習支援を平日の日中に毎日提供しています。同スクールは、2010年度から小中学生や既卒の高校進学希望者のための日本語学習支援の場として、フィリピン、ペルー、ウクライナなど、数十カ国にルーツを持つ約400人がスクールを利用しており、うち6割が通所、4割がオンラインで支援を受けています。
 また、2016年度からは地方自治体からの委託により、オンラインを活用して全国各地に住む子どもたちにも専門的な支援を届けています。

多面的な支援と必要なケア

 「YSCグローバル・スクール」で統括コーディネーターを務めるピッチフォード理絵さんは、子どもたちに十分な支援が行き届かない状況について次のように話します。「公立学校で日本語支援は行われていますが、日本語教育を担当する教師が年少者日本語教育の専門家ではないことが多く、また、自治体によって日本語指導の時間数や内容に差があります。学校外の民間で行う支援の場合は、多くは無償のボランティアに頼っており、専門的な知識や技術を持つ指導者が不足しています」。
 また、家庭環境や生活環境の厳しさが、学習支援の障壁となることもあるとピッチフォードさんは説明します。「例えば、貧困や不安定な生活状況に直面している場合も多く、学業に集中できないことがあります。子どもたちにとっては『安心できる居場所』や『信頼できる大人』の存在が成長を支える大きな要素となります。心のケアや生活面での支援が、学業の向上にもつながるのです」。

多様性の尊重と社会の責任

 外国につながる子どもたちの支援においては、「周囲の理解と支援が、子どもたちの力を引き出すために不可欠」と話すピッチフォードさん。「単に学習の機会を提供するだけでなく、子どもたちが安心して成長できる社会環境を整えることが求められています」と強調します。
 社会全体で多様性を尊重し、包摂的な環境をつくり出すことにより、子どもたちが自分の可能性を最大限に発揮し、社会に貢献する人に成長できる後押しとなることが期待されます。多様な背景を持つ子どもたちが、社会にしっかりと根を張って活躍できるよう、周りの支援する姿勢が重要です。

インタビュー・執筆 吉田 加奈子(東京都人権啓発センター 専門員)


※1 日本国籍を持つ人と同一の教育を受ける機会を確保し、外国人児童生徒等の就学促進の取り組みを行っています。詳細は、文部科学省HPの就学事務Q&A13をご参照ください。
※2 文部科学省2024年8月8日発表「令和5年度外国人の子供の就学状況等調査」による。
※3 所在地:福生市志茂183-2-B1 ホームページ https://www.kodomo-nihongo.com
※4 文部科学省2024年8月8日発表「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(令和5年度)」による。