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人権の視点で知る本・映画

印刷ページ表示 更新日:2024年3月15日更新

TOKYO人権 第101号(2024年3月11日発行)

JINKEN note/コラム


人権についてもっと知り、学びを助けてくれるおすすめの本・映画


人権に関連した話題がもっと身近に感じられるよう、当センターで人権の学びをサポートする「専門員」おすすめの作品を題材に、人権の視点で考えるためのポイントを解説します。

書籍レビュー

「差別」のしくみ 表紙

『「差別」のしくみ』
 木村 草太 著
 2023年/朝日新聞出版

「差別と偏見はどう違う?」「差別と区別は?」など、差別の概念と構造を憲法学者の視点から理論的に解説する著書。日本とアメリカの差別や法の歴史、日本での夫婦別姓訴訟や同性婚訴訟など近年の具体的な判例の紹介から、国や時代により、司法の場で「差別」はどのように定義されてきたのかを知ることができる。同時に、差別から個人を守るため、「差別されない権利」をいかに構築していくか提起している。国家の法制度という多くの人に関わる領域だけでなく、身近なところでの差別に注目する必要があるとも筆者は説く。


ポイント 自覚のない日常の差別行為を「マイクロアグレッション」と呼びます。著者は、『無自覚な差別こそが典型的な差別』で、『どんなに日常にあふれていても、また加害者の加害意図がなくても、差別は差別だ』と書いています。日常の言動に潜む小さな差別も見逃してはならない、とあらためて自分の日常の言動に意識を向けるきっかけを得られる1 冊です。

映画レビュー

対峙 パッケージ表紙

『対峙』
 フラン・クランツ監督
 2021年制作(劇場公開2023年)
 111分/G/アメリカ

アメリカの高校で起こった銃乱射事件の加害者と被害者の両家族が、教会の一室で対峙するこの作品は、ほぼすべてのシーンが家族4人の会話で成り立っている。加害者や被害者の写真が映ることもなく、事件の再現映像も一切流れない。最初はどちらもぎこちなく、この場が単なる言い争いにならないよう、細心の注意を払いながら、物語は徐々に核心に迫っていく。


ポイント 暴力や犯罪を人間関係に起きた害悪と捉え、当事者間の対話を通してその害悪を修復しようとする試みを「修復的司法」と呼びます。修復といっても元の状態に戻すことはできません。それでも、対話によって被害の回復・軽減や犯罪者更生の可能性を目指すことができます。劇中、双方の感情がぶつかり合い、それでも両家族が、懸命に前に進もうとする姿に心を打たれるでしょう。

©️2020 7 ECCLES STREET LLC Blu-ray & DVD 発売中(発売・販売:トランスフォーマー)


執筆 山田 真結、田村 鮎美(東京都人権啓発センター 専門員)

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