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知っていますか?「合理的配慮」

印刷ページ表示 更新日:2023年12月28日更新

TOKYO人権 第100号(令和5年12月28日発行)

特集

車いす介助 イメージ写真

―障害者差別解消法が変わります

 提供されている設備やサービス等について、障害のない人は簡単に利用できても、障害のある人にとっては利用が難しく、結果として障害のある人の活動などが制限されている場合があります。このような制限を作り出している社会のバリアは取り除いていかなくてはなりません。そのため、障害者差別解消法※1は、行政機関等や事業者に対し、障害を理由とする「不当な差別的取扱い」を禁止し、「合理的配慮の提供」を定めています。事業者についてはこれまで「合理的配慮の提供」は努力義務でしたが、2024年4月1日からは法的義務※2になります。改正法の施行を前に、内閣府障害者政策委員会委員で日本・東京商工会議所産業政策第二部長の大下 英和(おおした・ひでかず)さんにお話を伺いました。

大切なのは、建設的対話による相互理解

 様々な事業主に話を聞く中で、中小企業にこの法律が浸透しているとは言えないと感じている大下さんは、「障害のある人に、事業やサービスを利用してもらった経験のない事業者にとっては、この法律を自分ごとと捉えられていないのかもしれない」と分析します。その結果、事業者と障害のある人との間で、改正法への認識や理解の程度に隔たりが発生することを大下さんは懸念します。そうならないためには、「双方による建設的な対話が重要」と大下さんは力を込めます。
 「合理的配慮の提供」とは、行政機関等や事業者に対して、障害のある人から、手助けや必要な配慮について意思が伝えられたとき、負担が重すぎない範囲で、柔軟な対応を講じることです。例えば、障害により指を動かすのが難しく、会計のときに財布から小銭を取り出すのに手間取ってしまうので手伝って欲しいと申し出があった場合、本人によく確認しつつ、店員が代わりに小銭を取り出して会計を行うなどの対応が、合理的配慮の提供と言えます。何を、どの程度するべきといった正解はありませんが、「前例がありません」や「特別扱いできません」と配慮の提供を拒むことがあってはなりません。同じ障害でも程度によって適切な配慮が異なり、個別に検討することが必要となります。そのため、建設的な対話による「相互理解」が重要となるのです。
 「障害のある方には、こうしてもらうと利用しやすいなどの意見をどんどん言ってもらうことで、事業者の方も理解をしていく。そういう事例が出てくると、社会全体の経験値が上がり、『合理的配慮の提供』が広がっていくのではないか」と大下さんは感じています。障害のある人と事業者等が、対話を重ね、共に解決策を検討していくことが重要なのです。

共生社会の実現に向けて

 東京都が、インターネット都政モニター500人(18歳以上の都民)を対象に行ったアンケートで、「合理的配慮の提供」という考え方を知っているか聞いた※3ところ、約7割が「知らない」と回答しました。一方、行政機関や事業者が、機会の平等のために必要な範囲で、障害のある人に配慮し、優遇する対応を取ることを「必要だと思う」は97.4%という結果が出ており、多くの人がその必要性を認識しています。
 東京都では、障害者差別解消に関する相談事例などを公開しています。また、内閣府でも事業分野ごとの対応指針や相談窓口情報などを発信しています。このような情報を活用することで、「合理的配慮」とはどのようなものか、それぞれが理解を深めていくことができます。「配慮が必要な人も普通に買い物や外食もするし、遊園地にも行くということが、当たり前にできる社会になっていくといい」と、大下さんもこの法改正を機に社会全体が変わることを期待します。世の中に広く「合理的配慮」の考え方が認知されることは、誰にとっても生きやすい社会になる可能性を秘めているのです。

インタビュー・執筆 山田 真結(東京都人権啓発センター 専門員)

おおしたひでかずさん写真

大下 英和さん

参考になる情報サイト

「不当な差別的取扱い」、「合理的配慮の提供」についてや、事業者の障害者差別解消に関する取組事例・相談事例などを掲載しています。

内閣府/障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト
https://shougaisha-sabetukaishou.go.jp/documentcollection/<外部リンク>

東京都福祉局/障害者差別解消に関する普及啓発サイト​
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shougai/shougai_shisaku/sabetsukaisho_yougo/sabekaikeihatsu.html<外部リンク>


※1「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」2013年制定(平成25年法律第65号)、2021年改正(令和3年法律第56号)。
※2「東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例」(平成30年東京都条例第86号)では、2018年10月施行当初から事業者による「合理的配慮の提供」を義務としている。
※3「令和3年度第4回インターネット都政モニターアンケート 東京都障害者差別解消条例等について」(令和3年11月実施 487人回答)。  
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2022/02/01/01.html<外部リンク>