東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第88号(令和2年11月27日発行)

JINKEN note/コラム

ここから本文です

SNSと誹謗ひぼう中傷
よくある傾向と防衛策とは

経済学者の田中辰雄慶応大学教授による「ネット上での誹謗中傷への対処法」

ネット上で、誹謗中傷はなぜ起こるのか?

 テレビ番組「テラスハウス」に出演し、SNS(注1)で中傷を受けていたとされる木村花さんが亡くなったことを受け、インターネット上の誹謗中傷への具体的対策が課題となっています。ネット上での攻撃的な発言への対応は、今や私的な名誉棄損の問題を越え、社会として解決すべき人権問題となっているとも言えます。SNSを分析している経済学者の田中辰雄たなかたつお慶応大学教授にネット上での誹謗中傷への対処法を聞きました。

 ICT総研の調査によると、SNSは国民の約8割が利用していると言われ、身近な発言の場として活用されています。他人同士が集うことの多いネット上で、誹謗中傷はなぜ起こるのでしょうか。田中教授は次のように説明します。「ネットには、非常にわずかな人の意見でも日本中に拡散するという特徴があるため、一握りの人の発言で埋め尽くされ、本人の元にも必然的に届くという状態が生まれます。それが刃のようになって当事者を追い詰めてしまうという仕組みに問題があるのです」。

 では、どういう人がどういう理由で、誹謗中傷を疑われる書き込みをしているのでしょうか。「調査の結果、誹謗中傷する人はネット利用者全体の1%未満で、特別な傾向は見られず、中高年も多いことが分かりました。書き込む理由の一つは、間違いを正さねばならないという気持ちからくる正義感。もう一つは自分の中に鬱憤うっぷんがあって、人を攻撃したいという気持ちに駆り立てられているのが理由」と田中教授は言います。

もし誹謗中傷を受けたら

 誰もがターゲットとなり得る状況で、もし誹謗中傷を受けたらどうすればよいでしょうか。「ストーカー的に繰り返し行われるネット上の発言には、反論すると火に油を注ぐ可能性があります。発信者情報開示という法的な手段も考えられますが、現状では非常にハードルが高いため、基本的には、無視することが一番です」。また、リスク回避策として、「発言するときは、丁寧な言葉遣いをすること。ツイッターや掲示板は、職場や学校の教室など公の場で話しているという気持ちで使うこと。個人的なことを吐露したい場合は、LINEなど公開を限定したSNSで、当人同士で行うなど使い分けすること」と田中教授は提案します。

 こうした状況に対し、運営側が過度な発言を制限する仕組みを整備し始めています。8月にはツイッター社が、自分の投稿に返信できる人を事前に選べる機能を導入。10月にはインスタグラムも、いじめ防止のための自動削除機能を導入しました。「聞きたくない人に対しても言い続けられる仕組みは、言論の自由を越えています。運営側の対策づくりは、発信力を抑える必要性が認められてきた結果ではないでしょうか」(田中教授)。

 発言の自由度を確保しつつ、安全性を守る方法として田中教授は「サロン型SNS」を独自に提案しています。「読むことは誰でもできるけれど、書き込むのは会員制という特徴を持つSNSです。仕組みを変えて、非難が殺到しにくくする工夫が必要」と言います。

9割以上の人はあなたの味方

 情報発信による自由な発言と活発な議論は、社会を成熟させていく土台となるに違いありません。しかし、言葉は時に、命を脅かすほど相手を傷つけます。田中教授は「そんなときは、『誹謗中傷する人は、ネット利用者全体のごく一部。9割以上の人は、誹謗中傷の書き込みに心を痛めており、あなたの味方』と考え、心に余裕を取り戻してほしい」と呼びかけています。

インタビュー・執筆/吉田加奈子(東京都人権啓発センター専門員)

(注1)ソーシャル・ネットワーキング・サービスの略。

冊子表紙

『ネット炎上の研究』

田中辰雄・山口真一共著
付録に「炎上リテラシー教育のひな型──高校生のための荒らし・炎上リテラシー」として若者向けのSNS利用ガイドが掲載されている。

このページの先頭に戻る