東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第79号(平成30年10月31日発行)

コラム

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DV被害者に寄り添う「女性の家HELP」

シェルターの利用に国籍は問わない

 緊急一時保護施設(シェルター)とは、一般的に、DV被害者(同伴児含む)等を一時的に保護し、自立援助を行う場所を指します。東京を拠点に、国籍や在留資格の有無を問うことなく、多くの女性をシェルターに受け入れ、支えてきた「女性の家HELP」の皆さんにお話を伺いました。

【女性の家HELP 国籍別滞在者数】
(2017年4月1日~2018年3月31日)
昨年度から年度をまたいで滞在した者を含む。
国籍 女性 同伴児  
フィリピン 外国籍 女性8人
その内同伴児のいる女性は5人
カンボジア
バングラディシュ
小計  
日本 45 5 日本国籍 女性45人
その内同伴児 のいる女性は 4人
合計 53 13  

「女性の家HELP」(以下、HELP)の設立背景には、1980年代のグローバル化とバブル経済があります。当時、フィリピンやタイを中心としたアジア諸国から日本へ、未成年を含む女性たちが、性的搾取を目的に人身売買されるケースが頻発しました。そうした女性たちを救援するためにHELPは1986年に開設されたのです。加えて、日本人と結婚したものの、配偶者からの暴力(DV)を受ける女性が後を絶ちませんでした。外国籍女性の場合、身体的暴力の外に、出身国の友人との付き合いを禁じられる「社会的隔離」や、在留カードを取り上げられるなどの「法的な暴力」を受けている可能性があります。

 言葉が通じない海外で、トラブルに巻き込まれたときの恐怖を想像してみてください。言葉や文化が異なる日本で暮らす外国籍の人にとって、助けを求めることは簡単ではありません。例えば、配偶者から母子ともにDVを受けていたり、在留資格を失ったまま売春を強要されているなど、状況が深刻なほど、心理的にも言語的にも相談がしづらくなります。HELPでは、そうした弱い立場の外国籍の女性と子どもに寄り添い、安心できる居場所を提供し、共に解決の道を探るためのシェルター活動を行っているのです。

 無料の電話相談では、日本語に加え、英語、タガログ語など、可能な限り、相談者の母語で対応しています。これは、シェルター入所後の支援においても同様です。その理由とは「『日本人』からDVを受け続け、やっとの思いで相談をするのに、その相手がまた『日本人』だと心を開きづらいですよね。混乱している人の気持ちをなだめ、信頼関係を築いていく上で、母語で会話が成り立つことの意味はとても大きいのです」(HELP支援員)。実際にタガログ語と英語で支援に携わるフィリピン人ソーシャルワーカーの方は「相談者がフィリピン人ではない場合でも、私が日本人ではないというだけで打ち解けてくれます。言いたいことを素直に話してくれることは、支援のしやすさにつながるので大切なことです」と説明してくれました。

 HELPは全て個室で1泊から利用が可能です(大人3500円・子ども2500円/泊)。原則として2週間までの利用とされていますが、状況によっては長期滞在する人もいます。3度の食事は、各利用者の食文化や健康状態に配慮した手作りのメニューを提供し、必要に応じて行政や大使館とのやりとりを行い、時には日本語学習の支援もするなど、HELPでは利用者のニーズに合わせた支援で、利用者たちを生活の再建へと導いています。なお、運営は、寄付金、運営母体の日本キリスト教婦人矯風会会員による会費や事業収益、そして東京都からの補助金等でまかなわれていますが、支援活動を維持していくのは厳しいのが現実です。

 「『予防は治療に勝る』と言いますが、DVの予防に必要なのは、子どものうちから『自分を大切にすること、そして自分以外の人を大切だと思う心』を育てること。この心が育てば、DVのみならず、児童虐待、障害者差別、セクハラ、パワハラ、いじめなど、あらゆる人権問題が減ると思います」(支援員)。ただ、人の心が育つには時間がかかります。今すぐできること、それは、HELPの取組みをきっかけにして、学校や職場、あるいは家庭で、理解と支援の輪を広げることではないでしょうか。

インタビュー/林勝一(東京都人権啓発センター専門員) 編集/那須桂

もっと知りたい!

「女性の家HELP」の公式サイト
外部サイトへ移動しますhttp://kyofukai.jp/aboutus/inst/help
【無料電話相談(お問い合わせ)】
03-3368-8855(月〜金:10時〜17時)
(注)HELPでは、生活再建時に必要となる物品の支援も受け付けています。

<取材先情報>
女性の家HELP(公益財団法人 日本キリスト教婦人矯風会)
(注)シェルター所在地は、利用者の安全を守るため非公開としています。

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