東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第87号(令和2年9月10日発行)

コラム

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大手コーヒーチェーンが目指す社会とは

一杯のコーヒーが生む「自分の居場所」

今夏、スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社(以下、スターバックス)が、ダイバーシティ&インクルージョン(注1)を象徴する店の一つとしてオープンさせた「サイニングストア」。店の特色や、同社が目指す働き方や生き方についてご紹介します。

写真:手話による接客風景

 スターバックスが、今年6月に東京・国立市にオープンした「スターバックス コーヒー nonowaノノワ国立店」。手話の世界に触れることができる「サイニングストア」と称する店で、同社では世界で5番目、日本では初めての出店です。

 店内の壁には、手話をモチーフとしたアートが飾られ、商品の受け取り順を知らせる電子表示には、あいさつなどで使う簡単な手話が表示されています。同店で働く社員は、19人が聴覚障害者で、6人が聴者。接客や社員同士のコミュニケーションには、主に手話や指さしが使われますが、手話を知らない人も気軽に利用できるようにと、専用のメニューシートや筆談具が用意されている他、従来どおり音声での注文も可能です。

 客層は他店同様、年代も性別もさまざまで、聴覚障害者が特別多いわけでもありません。同社ダイバーシティ担当の林絢子はやしあやこさんは「地域の皆様が、通常の店と同じように受け入れてご利用くださっているのがうれしいですね」と語ります。これは、国立市に東京都立立川ろう学校があり、ろう文化に対して理解のある地域であることも要因と考えられます。スターバックスが同市に出店を決めたのもこの土地柄が理由の一つです。これを踏まえた上で林さんは次のように語ります。「ろう学校の学生さんやご家族に、社員が障害の有無に関係なくお客様の前で接客をする姿を見て、社会人として働くことへの夢を広げていただければと思っています」。実際、林さんは聴覚障害のある子供を持つ母親が「皆さんがいきいきと働く姿を子供に見せたい」と話していたのを聞き、同店の存在意義を強く感じたそうです。

写真:nonowa国立店内壁の指文字装飾

「STARBUCKS」を指文字で表現したサインが象徴的にデザインされている

 一方、聴覚障害者の関係者に限らず好意的な声が寄せられています。ある来店客は「店員の手話がとても格好いいし、見ていて気持ちがいい。こういう店を出すスターバックスも格好いいね」と語っていたそうです。これは、スターバックスが目指す「障害の有無にかかわらず共に働き、多様な人々が自分らしく過ごし活躍できる居場所」が体現されている証といえます。

 もともと同社には「Our Mission and Valuesアワー ミッション アンド バリューズ」と呼ばれる行動規範があり、そこには「お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくる」と明記されています。ダイバーシティ&インクルージョンが社風として根付いているため、それが働きやすさにつながっています。例えば、サイニングストアのようなインクルーシブ(注2)な環境と機会の創出をはじめ、ライフステージに合わせた各種制度を整備することで、多様な働き方や自分らしい生き方を選ぶための支援をしています。同社は女性が多い職場でありながら離職率が非常に低くなっています。しかし、林さんは次のように語ります。「制度も大事ですが、まずは一人一人が『尊重されている』と感じることや、『自分の居場所と感じる』とは、どういうことかを常に考えることが大切です。それが心理的な安心感と居心地の良さを生むのだと思います」。

 こうした理念を持つ企業が増えることで、誰もが安心して働き、多様性を尊重し認め合いつつ、自分らしく生きられるような社会が実現していくのではないでしょうか。

インタビュー/田村 鮎美(東京都人権啓発センター 専門員)
編集/小松 亜子

(注1)ダイバーシティ&インクルージョン
性別、年齢、障害、国籍、性的指向、価値観などの多様性を尊重し認め合い、共に能力を発揮し活躍すること。

(注2)インクルーシブ
日本語では「包み込むような/包摂的な」。多様性を尊重し、あらゆる人が排除されず社会参加すること。

もっと知りたい!

スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社

URL:外部サイトへ移動しますhttps://www.starbucks.co.jp/

「Our Mission and Values」の全文やダイバーシティ&インクルージョンに関する詳細の他、店舗や商品情報も紹介されています。

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