東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第73号(平成29年2月28日発行)

コラム

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自由貿易にまつわる人権を学ぶ“開発教育”「貿易ゲーム」で世界経済の問題を疑似体験

「貿易ゲーム」をご存知ですか? 南北格差をはじめとした世界経済の不平等を知り、考え、変わり、新たな行動を起こしていくことを目的とした“開発教育”の教材の1つです。
多様な気づきと深い学びをもたらしてくれる「貿易ゲーム」について取材しました。

顔写真

中村絵乃さん

 「貿易ゲーム」は、1982年にイギリスのNGO、クリスチャン・エイドが世界経済を学ぶために制作した、自由貿易を疑似体験するゲームです。日本では1985年に(財)神奈川県国際交流協会が日本語翻訳版を制作し、全国の学校などを中心に普及しました。より世界情勢に沿った内容にするため、2001年に(財)神奈川県国際交流協会とNPO法人 開発教育協会(DEAR)が共同で改訂版を制作しました。今では学生や子どもたちだけでなく、貿易相手である途上国の人たちの人権も考える必要があることに気づき始めた一般企業が社員研修に利用するなど、幅広い場面で活用されています。

 DEARの中村絵乃(なかむらえの)さんは、「私たちは1982年から世界の問題を知り、考え、解決のために行動する人を育てる教育活動をおこなってきました。今日ではグローバル化が進み、皆が自由貿易の関係者であることを知る必要があります」と、“開発教育”の重要性を伝えています。

 ここで、貿易ゲームの内容を簡単に説明しましょう。参加者はいくつかのグループ(=国)に分けられ、各グループは封筒を受け取ります。封筒の中には、紙などの材料(=資源)やハサミ・鉛筆・定規などの道具(=技術)、クリップ(=通貨)などが入っています。しかし実は、その中身はグループによってまちまちで、豊富な場合(=先進国)もあれば、材料がほとんど無かったり、材料は有っても道具が無かったりする場合(=途上国)もあります。そうした不平等な状態から、材料で「製品」を作りそれを売って、より多くの通貨を稼ぐよう、グループ同士で競います。他のグループと交渉したり協力したり、道具や資源を売買したりしても構いません。皆、ゲームに熱中し競争は白熱しますが、たいてい最初に豊かな条件を与えられたグループに、一番多くの通貨が集まる結果になります。ゲーム終了後は「振り返り」をおこない、参加者はゲーム中に起きたことや感じたことを発言したり、意見を共有したりします。

写真:ゲーム風景

貿易ゲームに熱中する東南アジアの若者たち

 貿易ゲームの参加者からは「得点を稼ぐことに没頭して、不公正なルールでゲームしていることに気づかなかった」、「先進国グループは最初からたくさんものを与えられていてずるいと思った」、「途上国の人たちの人権を無視して利益を追求することで、先進国の豊かさが築かれていることがわかった」、「世界から争いをなくす最善の方法は、不公平や貧困を解消することだと思った」といった感想や意見が出るといいます。貿易ゲームは、単に自由貿易を疑似体験するだけでなく、過程を振り返ることで、不公正な貿易が途上国の人権状況を悪化させていることに気づき、その解決に何が必要かを考えることが主旨なのです。

 「若い人たちには、世界にはいろいろな立場の人たちがいることを知って、物事を多面的に捉えられる力を持った大人になってほしいですね。そういう人が増えれば、世界の状況はもっと良くなっていくと思うんです」(中村さん)。

 国際化が叫ばれるようになって久しく経ちます。グローバルな人材には語学力だけでなく、自分とは異なる立場にある人のことも尊重できる力が、必要不可欠なのではないでしょうか。先進国で暮らす私たちがなかなか気づかない問題を実感させてくれるゲームで、皆さんも視野を世界に向けてみませんか。

インタビュー/鎌田 晋明(東京都人権啓発センター 専門員)
編集/那須 桂

もっと知りたい!

教材表紙:新・貿易ゲーム

開発教育入門講座(有料)

開発教育入門講座(有料)
毎月22日、19時00分から21時00分まで
会場 富坂キリスト教センター1号館(後楽園駅より徒歩10分)
NPO法人開発教育協会によるワークショップです。
新・貿易ゲームをはじめとした開発教育の教材を体験してみませんか?
お問い合わせはDEARまで。

開発教育協会(DEAR)ロゴ

<取材先情報>
NPO法人 開発教育協会(DEAR)外部サイトへ移動しますhttp://www.dear.or.jp/

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