東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第72号(平成28年11月28日発行)

コラム

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社会参加の再チャレンジを支援する
歌舞伎町の真ん中で出所者を雇用する居酒屋

 新宿・歌舞伎町に、刑を終えて刑務所から出た人を雇用する居酒屋があります。出所者の再犯者率が5割近くに上る中、社会復帰のための支援は大きな課題です。支援プロジェクトの発案者である玄秀盛(げんひでもり)さんに、取り組みにいたるまでの経緯や目的、そこに込めている願いや思いなどをお聞きました。

顔写真

玄秀盛さん

 日本一の歓楽街といわれる新宿・歌舞伎町。その真ん中に、江戸の火消しをイメージした店舗デザインが目を引く、「新宿駆け込み餃子」という居酒屋があります。アツアツの肉汁がたっぷりの餃子が好評で、連日多くの客で賑にぎわっています。

 一般社団法人再チャレンジ支援機構による、出所者の再犯防止と社会復帰支援のプロジェクトによって生まれたこのお店では、「働きたい」と全国から集まってくる出所者を積極的に雇用しています。このプロジェクトを始めたのは、同機構の設立者で、公益社団法人日本駆け込み寺の代表でもある玄秀盛さんです。2016年2月には、新たな受け入れ先として、「駆け込み酒場 玄」を同じ歌舞伎町内にオープンさせました。

 玄さんは2002年、どんな悩みの相談も無料で受け付ける、年中無休の日本駆け込み寺を歌舞伎町に開設。DVやいじめなど数々の相談を受け、問題を解決していくうちに、被害者だけを救っていたのでは根本的な解決にならないと気付いたそうです。「加害者が出所しても一般社会に適応ができず、自暴自棄になり、また被害者を生むという負のスパイラルに陥るのを目の当たりにしてきました。それで、出所者のフォローが必要だと考えました」(玄さん)。

写真:看板と座席

新宿駆け込み餃子の店内

 成人の再犯者率は1997年から上昇し続け、2014年には47.1%に上っています(法務省「平成27年版犯罪白書」)。これまでの出所者支援では「住まいと仕事」を提供する施策が進められていますが、「これだけでは本当に社会復帰させることは難しい」と玄さんは話します。出所者の中には、社会性を身に付ける機会や環境に恵まれなかった人が少なからずいます。また、刑務所内では私語などが禁じられているため、人とのコミュニケーションに自信を持てなくなってしまう人もいます。玄さんはそれこそが、就労場所に居酒屋を選んだ理由だといいます。「ここには、出所者が自立するためのすべてがそろっています。『いらっしゃいませ!』と大声であいさつをし、テキパキと動いて注文も取ったり、酒を飲んだお客からの冷やかしもある。ましてや、歌舞伎町のど真ん中だから、しょっちゅう誘惑がある。そういう緊張感の中で働くことが、自立に向けた訓練にうってつけなんです」。

 同店で働く従業員の約2割が出所者で、2、3か月の就労期間を経て、自信がついたら「卒業」し、転職するなどして自立の道を進みます。「新宿駆け込み餃子」では、開店1年目に雇用した20数人の出所者のうち、再犯をした人は1人もいませんでした。全国平均に比べて良い成果が出ている背景には、気づきと学びの詰まった労働の経験に加え、「駆け込み寺」の存在があります。困りごとを何でも話せて、解決に導いてくれる玄さんらスタッフの存在が心の支えになることで、安心して人生をやり直すことができるのです。

 再犯者率が上昇し続ける今、社会が抱く出所者に対する「怖い」「信頼できない」といった負のイメージや先入観が、社会復帰の際の障害となっています。ぜひ、実際にお店を訪れてみてください。活気あふれる従業員の皆さんが迎えてくれるはずです。

インタビュー/林 勝一(東京都人権啓発センター 専門員)
編集/脇田 真也

もっと知りたい!

冊子表紙

玄秀盛『もう大丈夫』
KKロングセラーズ

一般社団法人 再チャレンジ支援機構
電話:03-6205-6022
新宿駆け込み餃子
新宿区歌舞伎町1-12-2 第58東京ビル1、2階
電話:03-6233-7099
駆け込み酒場 玄−gen−
新宿区歌舞伎町1-17-7 リカム3ビル 4f
電話:03-6278-9365

<取材先情報>
公益社団法人 日本駆け込み寺  新宿区歌舞伎町2-42-3 林ビル 1F  電話:03-5291-5720

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