東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第70号(平成28年5月31日発行)

コラム

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東京の“ リトルヤンゴン” でミャンマーを知る 難民が経営するレストラン「Swe Myanmar(スィゥ・ミャンマー)」

新宿区の高田馬場駅周辺には、ミャンマー人が経営する母国の料理店や日用品店が数多く集まっています。ミャンマーの旧首都ヤンゴンにちなんで通称「リトルヤンゴン」と呼ばれるこの一角に店を構えるレストラン「Swe Myanmar」を訪ねました。

顔写真

タンスィゥさん

 「Swe Myanmar」は、高田馬場駅からさかえ通りを3分ほど歩くとあります。温もりのある雰囲気の店内には、壁一面にミャンマー料理の写真がずらりと並びます。「メニューは80種類以上あります」と胸を張るのは、オーナーでミャンマー出身のタンスィゥさんです。「日本人はいろいろな国の料理を食べるのが好き。ミャンマー料理も紹介したい」と、2012年11月に開店しました。

 タンスィゥさんは、ミャンマーで地質学の大学講師をしていました。しかし、民主化運動に参加したことで、軍事政権の弾圧による命の危険を感じて、1989年に単身で日本へ逃れてきました。

 来日後は、日雇いの仕事を経て建設会社に就職。妻も呼び寄せ、夫婦で社員寮に入居するなど、数年で落ち着いた生活ができるようになりました。しかし、ミャンマーに帰国できるめどは立たず、ビザの在留期限を過ぎてオーバーステイになってしまいます。そんな将来の見えない生活のなかで長女をもうけたことをきっかけに、子どもの将来を考えて難民認定を申請。1997年に無事に認定されました。

 勤務していた建設会社が地方へ移転した際、タンスィゥさんは家族で住み慣れた都内に留まり、レストランの開業を決意しました。しかし資金が十分ではなかったため、内装工事は自分でおこなったそうです。開店から4年。今では、日本人もミャンマー人も訪れる人気店となっています。

写真:料理2品

左:チキンカレーにパイ生地のようなパラータをつけて食べる「鶏肉のパラータ」。サクサクでほのかに甘みのあるパラータは女性に人気。
右:「ダンバウ」。

 料理に対するモットーは、本場の味を再現することです。そのため、こだわりの食材は母国から直接、輸入しています。「ミャンマー料理は隣りあう中国やタイ、インドの影響を受けていますが、どれもミャンマーならではの味付けで、例えばカレーも、タイやインドとは一味違います。それに、民族ごとに料理も違います」(タンスィゥさん)。料理を作るのは妻のタンタンさん。看板料理は、スパイスの効いた炊き込みご飯に、じっくり煮込んだ大きな骨付きチキンをのせた「ダンバウ」です。マイルドな味付けのチキンはスプーンでもホロホロと崩せます。

 タンスィゥさんは、すでに日本での暮らしが20年以上。日本で生まれた二人の子どもは大学1年生と小学6年生に成長しました。「最初は日本語が話せず苦労しました。難民と認定されるまでは健康保険に加入できず医療費を全額負担するなど、経済的には苦しい時期が続きましたが、安心して暮らすことができる日本に感謝しています」と語ります。しかし、母国への思いは募ります。

 ミャンマーは25年ぶりにおこわれた自由選挙によってこの4月に新政権が発足し、民主化が進みつつあります。出国するときに持ってきたという、壁に掛けられたアウンサンスーチー氏の肖像画を見ながら「もう少しでミャンマーに入国できる日が来るかも」とタンスィゥさんは期待を込めます。

 ただし、母国に帰れる日が来ても日本で築いた生活基盤や子どものことを考えると、永住帰国については容易に答えは出せないと言います。母国と家族の将来について希望と不安をかかえながら、タンスィゥさん一家は日本で暮らしています。

 多様な国の人々が暮らす東京には多彩な文化が息づいています。「Swe Myanmar」でおいしい料理を楽しみながら、難民のことを知り、ミャンマーの文化に親しんでみてはいかがでしょうか。

インタビュー/林 勝一(東京都人権啓発センター 専門員)
編集/小松 亜子

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公益社団法人 難民起業サポートファンド
日本で初めての難民向けのマイクロファイナンス(小規模金融)機関。経営支援と共に事業資金の融資をおこなう。Swe Myanmarをはじめ様々な事業に取り組む「難民起業家」を支援。
外部サイトへ移動しますhttps://espre.org/

取材先情報
Swe Myanmar(スィゥ・ミャンマー)
東京都新宿区高田馬場3-5-7
電話:03-5937-0127

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