東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第68号(平成27年11月20日発行)

コラム

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さまざまな文化や個性に触れ、多様性を認め合う 合宿型ボランティア活動「国際ワークキャンプ」

グローバル化が進むなかで、多文化理解や多様性の尊重は、ますます私たちに求められるようになりました。今回は、このテーマを体当たりで考える機会になりそうな「国際ワークキャンプ」をご紹介します。どのような活動なのか、主催団体であるNPO法人 NICE ( ナイス ) の代表、 開澤真一郎 ( かいざわしんいちろう ) さんに伺いました。

顔写真

開澤 真一郎さん

 国際ワークキャンプは、世界中から集まった参加者が、国内外で地域の住民と一緒におこなうボランティア活動です。具体的な活動内容は、難民や障害者の支援、学校やトイレの建設、森の手入れ、村祭りの運営、遺跡の発掘など、地域のニーズに応じて多岐にわたります。期間も、短期のものから1年間といった長期のものまで多彩です。活動期間中は、参加者全員で現地の公民館や学校などに泊まり込み、自炊をしながら共同生活をするのが大きな特徴です。

 もともとこの取り組みは、第一次世界大戦後の1920年に、フランスとドイツの若者たちが共同で起こした平和運動が原点です。「戦争はお互いの理解不足で起きた」と考えた青年ボランティアたちは、戦争で荒らされたフランス郊外の農地再建に尽力しました。協力し合うことでお互いの理解を深めようとするこの活動が世界中に広がり、国際ワークキャンプへと発展したのです。現在は世界各国に主催団体が設立され、約95カ国で3,000種類に及ぶ国際ワークキャンプが実施されています。

 その主催団体の一つとして、日本に拠点を置くのがNPO法人 NICEです。1990年に、大学を休学し、ポーランドで国際ワークキャンプに参加した開澤真一郎さんが6人の仲間と立ち上げました。当時の日本にはまだ国際ワークキャンプの窓口がなく、日本人が参加しづらいと感じたのが設立の理由です。NICEが理念として掲げる「カラフルでヘルシーな世の中」について、開澤さんは次のように語ります。「『カラフル』には、多様な人種や個性、生態系がそれぞれの持ち味で輝くこと、『ヘルシー』には、身体だけでなく、心や自然、文化、コミュニティを健康的な関係にしたいという思いを込めています」。

 現在、NICEでは、海外の他団体が主催するプログラムに日本人の参加希望者を派遣するほか、国内外で年間300以上の国際ワークキャンプを開催しています。参加者の年齢層は大学生を中心に80代までと幅広く、設立以来、NICEを通じて参加した人数は約6万人に上ります。

小屋での集合写真

ベトナムのスラムで豚小屋作り

 開澤さんは国際ワークキャンプの魅力を次のように語ります。「多様な国籍、年齢、性別、職業の人たちが集まって、泣いたり笑ったりしながら力を合わせる体験は、とても得難く貴重なものになると思うのです。また、一緒に活動する現地の住民の方々と、心の通った交流ができるのも楽しみの一つです。自宅に招かれてお酒を酌み交わしたり、おばあさんたちにダンスを教わったりと、観光や仕事ではなかなか経験できないことがたくさんあります」。

 一方で、文化や習慣の違う者同士が共同生活をするため、食材の調理法や入浴時間などで些細なもめ事も起こります。しかし、開澤さんは「トラブルは歓迎すべきこと」といいます。「もちろん、現地に迷惑をかけるなど、活動に支障を来たすような事態は防ぐべきです。しかし、それ以外のことであれば、きちんと話し合うことでお互いの理解が深まります。どんな人とでも、話してみなければ何も始まらないのに、心に壁をつくるのはもったいないことです」。

 国際ワークキャンプの醍醐味は、ぶつかり合いながらも、皆でさまざまな問題を解決していくプロセスにこそあるといえそうです。多様な文化を理解し、尊重し合う気持ちを育むきっかけの一つとして、この活動に参加してみてはいかがでしょうか。

インタビュー/林 勝一(東京都人権啓発センター 専門員)
編集/小松 亜子

もっと知りたい!

冊子表紙
『世界のワークキャンプ 2015』
編集・制作 開澤真一郎 ほか/発行 NPO法人 NICE
日本をはじめ、世界各地でおこなわれている約3,000種類の国際ワークキャンプを一冊に集約。
活動内容の紹介や参加者のレポートなどが充実している。

NICEロゴ取材先情報
NPO法人 NICE(日本国際ワークキャンプセンター)
外部サイトへ移動しますhttp://www.nice1.gr.jp/
電話:03-3358-7140

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