東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第65号(平成27年2月27日発行)

コラム

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バリアフリー映画でひとり親家庭支援 図書館で始まる字幕制作者養成講座

視覚や聴覚に障害のある人が、家族や知人と一緒に楽しめるバリアフリー映画。新宿区立角筈図書館ではバリアフリー映画の字幕制作者養成を始めました。受講対象は原則としてひとり親家庭の母親。企業や団体と連携しながら、障害者支援をひとり親家庭の経済的な自立支援へとつなげる新しい取り組みをご紹介します。

顔写真

松永剛政さん
情報を社会に届けることが図書館の役目。私たちの社会になくてはならない公共施設です。

 「バリアフリー映画」には字幕と音声ガイドが付けられています。字幕はセリフ以外の効果音や音楽なども表示し、聴覚障害者に配慮したものになっています。

 図書の音訳や対面朗読など、障害者サービスに力を入れてきた新宿区立戸山図書館は都内でさきがけて図書館でのバリアフリー上映会を開催してきました。障害のある人だけでなく音が聞こえにくくなった高齢者などにも好評です。

 一般的に映画は“娯楽だから”ということでバリアフリー化が遅れています。一方で、障害者差別解消法が2016年4月から施行されると、映画やテレビなどの映像も視覚や聴覚に障害のある人への情報保障が求められるようになります。しかしバリアフリー字幕の制作には高度な技術が必要なため、人材の養成が急務となっています。そこで新宿区立角筈図書館では養成講座を開講することとなりました。

 この講座、じつは企業や団体の支援・協力によって実現したものでした。同館館長の松永剛政(まつながたけまさ)さんは次のように言います。「戸山図書館でバリアフリー上映会が実現できたのは、映画のバリアフリー化を支援する住友商事の協力があったからです。当事者だけでなく、より多くの人に映画のバリアフリー化の大切さを知ってもらえたと思います」。上映会の成功は、次の試みにつながります。「住友商事が佐賀県で東日本大震災の避難者やひとり親を対象に字幕制作者の養成講座をおこなっていることを知り、東京でも開催できないかと相談したのです。ビジネス街に近く、起業支援をおこなっていた角筈図書館なら養成講座を開催するのに相応しいと考えました」(松永さん)。

会の写真

2014年12月におこなわれた説明会には、定員の2倍を超える40人が参加。

 字幕制作者としての技能を身に付ける5か月間のこの養成講座の特色は、受講者を原則としてひとり親家庭の母親に限定したことです。

 日本ではひとり親家庭の貧困問題が大きな課題となっており、経済的な自立支援が求められています。「字幕制作は、一定のパソコン技能が必要ですが、在宅ワークが可能ですから、“シングルマザー”の自立支援に適しています」(松永さん)。

 東京都ひとり親家庭支援センターはあと立川(以下、はあと立川)では、東京都の委託を受けて在宅就業支援プログラムをおこなっていますが、実際に仕事につなげることが課題となっていました。「字幕制作者養成は、在宅ワークの受注拡大につながると、はあと立川の賛同が得られました。そこで、はあと立川を通じて、パソコンスキルがあり在宅ワークという就業ニーズを持つ方にこの講座を紹介してもらいました」(松永さん)。

 養成講座の講師は映像のバリアフリーに取り組むNPO法人メディア·アクセス·サポートセンターが担当。説明会で熱心に話を聞く参加者について、松永さんは「就業支援を受けた方は、今度は自分が『社会に貢献できる』という側面にも意義を感じてくれている」と言います。

 「図書館は社会のためにもっとできることがある」と語る松永さん。字幕制作者養成を社会的弱者の支援につなげたいとの思いが一致した企業、団体との連携により始まったこの取り組みは、図書館の姿を変えていく新たな試みともいえそうです。

インタビュー/林勝一(東京都人権啓発センター 専門員)
編集/脇田真也

新宿区立図書館
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住友商事株式会社 環境・CSR
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NPO法人メディア・アクセス・サポートセンター
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東京都ひとり親家庭支援センターはあと
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