東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第62号(平成26年5月30日発行)

コラム

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「字幕付きCM」をご存じですか? すべての人に等しく情報を

最近のテレビCMは工夫が凝らされ、魅力的な作品がたくさんあります。しかし、「CMになると家族の中で自分だけ分からず寂しい」と多くの聴覚障害者は感じているといいます。そうした声をきっかけにして、テレビCMに字幕(注)を付ける取り組みを始めた企業をご紹介します。

花王株式会社・字幕CM研究プロジェクトチームの篠崎隆久さん、林佳文さん、菊池雄介さん(左から)
字幕付きCMだと気付いてもらうため、CM冒頭でテレビ画面の隅に「字幕」と表示しています

 テレビのリモコンに「字幕」ボタンがあるのをご存知ですか? 地上デジタル放送への移行により、このボタン操作で、字幕の表示と非表示を切り換えられる字幕放送が増えています。

 字幕は、聴覚障害者や耳の聞こえづらい高齢者などに有効なだけでなく、大きな音が出せない病院の待合室などでも活用されています。さらに、災害など緊急時の情報提供にも不可欠です。

 日本には、耳の不自由な方たちが難聴者を含めておよそ2,000万人いるといわれています。つまり、人口の約15%が、テレビ放送の音声情報を得にくい状況にあるのです。そのため総務省では、放送を通じた情報を保障するため、字幕放送や副音声による解説放送、手話放送の充実化を進めています。

写真:テレビコマーシャルの一部

字幕付きCMの一コマ

 しかし、CMは民放での全放送時間の約20%を占めているにもかかわらず、字幕はありませんでした。そこで近年、取り組まれているのが「字幕付きCM」です。

 花王株式会社が、CMに字幕をつけるきっかけになったのは、聴覚障害者の「CMにも字幕があれば」のひと言でした。2011年2月、社内のクリエーティブ部署の3名で研究プロジェクトが発足しました。「最初はナレーションをただ文字にすればいいと考えていました」と菊池雄介(きくちゆうすけ)さんは振り返ります。「テスト版を聴覚障害者の方々に見てもらい、意見交換を重ねながら花王独自のガイドラインを策定しました。字幕表示の位置を決めたり、BGMや効果音をどう表現するかなど課題は多かったですね」(菊池さん)。

 現在、花王では、日曜日21時放送の『ワンダフルライフ』(フジテレビ系列)などに字幕付きCMを提供しています。林佳文(はやしよしふみ)さんは、聴覚障害者からの感想に手応えを感じています。「“CMって短い映画のようですね”といってくださいました。また“家の中に花王製品が増えていた”という声も。字幕があれば健聴者と同じように見ていただけるのです」(林さん)。また、「聴覚障害のある年頃の娘さんが、“化粧品の情報を直接受け取れるようになった”という母親からの喜びの声もありました」。

 花王では、年間約300本制作するCMすべてに字幕をつけ、ホームページで公開していますが、字幕付きでテレビ放送できるのはそのうち3%ほどです。これは、字幕が他社のCMにずれ込む放送事故の防止など、放送局のシステム検証が不十分なためです。そのため現在、放送事業者でつくる民間放送連盟が中心となり、1社提供枠の番組に限り、トライアル放送をおこない、検証を重ねている段階です。

 テレビ放送による情報は、誰でも等しく受け取る権利があります。CMにも字幕が付くのが当り前になるまであと少し。ぜひ一度、リモコンの「字幕」ボタンを押してみませんか?

(注)「字幕」には、テロップや映画の字幕のように、常時表示されている「オープンキャプション」と、視聴者がリモコン操作で表示と非表示を選択できる「クローズドキャプション」があります。

インタビュー/林 勝一(東京都人権啓発センター 専門員)
編集/小松 亜子

花王のロゴ

花王株式会社

字幕付きCMページ:外部サイトへ移動しますhttp://www.kao.co.jp/corp/ad-cm

花王ミュージアム(墨田区)では、字幕付きCMをはじめとするユニバーサルデザインの取り組みが紹介されています。
(事前予約制。詳細は要問合せ。見学受付電話:03-5630-9004)

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