東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第48号(平成22年11月29日発行)

リレーTalk

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すべての路上生活者を“畳に上げる” ビッグイシューの挑戦

さのみくさん

有限会社ビッグイシュー日本 東京事務所マネージャー
佐野未来(さのみく)さん

ホームレスの人たちが街角で販売している雑誌『THE BIG ISSUE(ビッグイシュー)』は、収入を得る機会を創出し、社会復帰を支援する社会企業として、1991年にロンドンで誕生。2003年9月に日本版が創刊されました。今年(2010年)で7周年を迎えた「ビッグイシュー日本」の佐野未来(さのみく)さんに、お話をうかがいました。

 『THE BIG ISSUE』の販売者は、すべてホームレスの人たちです。日本版創刊以来7年間の登録数はのべ1,090人。そのなかの121人が新しい仕事を見つけて“卒業”していきました。現在、北海道から鹿児島まで14の都道府県で、156人が販売者として働いています。支援の仕組みは、雑誌1冊300円のうち160円が販売者の収入になるというもので、2010年3月までの総販売数は388万部、ホームレスの人たちの直接の収入は総額5億748万円になりました。

 ビッグイシューは、ホームレスの人たち自らが働いて自立することを目指す「セルフヘルプ」という理念を掲げています。この事業はチャリティーではなく“ビジネス”です。お客様は読みたい雑誌を購入する。そして、販売者は誇りを持って商品を販売する。施す/貰うのではなく、あくまでビジネスとしてお互いに満足感が得られるからこそ、対等で健全な関係が成立するんです。そのためにも、スタッフであるわたしたちは、質の高い雑誌を作り続けることが重要だと思っています。

 2008年9月のリーマンショック以降、20代・30代の若い販売者が急激に増えています。不況の波が押し寄せた途端、若年層を含む多くの人たちが路上に出ざるをえなかったことで、貧困に対する社会のセーフティーネットが十分でないことが明らかになりました。また、ホームレスの人たちの約6割が、なんらかの障害を抱えているのではないかという調査報告もあります。いまや「貧困は自己責任」などでないことは明らかです。これは社会全体で取り組んでいくべき人権問題です。

 収入源を創出する一方で、わたしたちは、それだけでは解決しない問題があることにも気づかされていました。人間の生活に必要なのはお金だけではない、何かこころの支えのようなものも必要ですよね。そこで、わたしたちは、一般市民や企業、行政の方々とも協力しながら、新しい未来を創っていくため、2007年9月に「NPO法人ビッグイシュー基金」を立ち上げました。そこでは「就業応援」「生活自立応援」「文化・スポーツ活動応援」という3つの応援事業を展開しています。

 「生活自立応援」では、仕事や家族などの身近な絆を失うことで希望まで失ったホープレス(hopeless)な状態から社会との“つながり”を取り戻してもらうため、医療相談や住宅相談、法律相談などのプログラムを提供しています。また、「文化・スポーツ活動応援」では、生きることへの意欲や喜びを感じられるように、さまざまな音楽やスポーツ活動などを支援しています。ホームレスの人たちのダンスパフォーマンス「ソケリッサ」(『TOKYO人権』41号参照)の活動などもバックアップしているんですよ。来年は基金の仕事として「就業応援」や「市民参加」にも力を入れて行く予定です。

 こうして、生きていくための英気を養いつつ、最終的にはホームレス状態の人がいなくなること、そういう社会をつくることが、わたしたちのミッション( 使命)です。『THE BIG ISSUE』という雑誌が必要とされなくなるその日まで、わたしたちの挑戦は終わりません。

冊子表紙

ビッグイシュー日本版
外部サイトへ移動しますhttp://www.bigissue.jp/

雑誌『THE BIG ISSUE』の発行は毎月1日と15日の2回。
販売場所などの詳細は上記ビッグイシュー日本のホームページをご覧ください。

シンポジウム「若者ホームレスの、今」 参加費無料

日時
2010年12月19日(日) 15時00分から17時00分まで(開場14時00分)
場所
東京都現代美術館 地下1階講堂(江東区三好4-1-1)
登壇者
宮本みち子(放送大学教授)、稲葉剛(NPO法人もやい)、井村良英(NPO法人育て上げネット)、雨宮処凛(作家)、佐野章二(ビッグイシュー基金)
お申し込み先
NPO法人ビッグイシュー基金
電話 03-6380-5088
外部サイトへ移動しますhttp://www.bigissue.or.jp/

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