東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第47号(平成22年9月8日発行)

特集

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歩く人と見物する人みんなを元気づける、性的少数者のパレード

顔写真

砂川秀樹(すながわひでき)さん

東京プライド代表 文化人類学者 東京大学非常勤講師

性的少数者のお祭りとして知られる『東京プライドパレード』がさる8月14日、2年ぶりに開催されました。この日、イベント会場となった代々木公園と、パレードが実施された渋谷から表参道にかけての通りは、多様性をあらわす性的少数者のシンボルである虹色をモチーフとした旗で彩られました。

性的少数者それぞれがかかえるさまざまな問題、パレードの目的など、主催団体に取材しました。

性的少数者のパレードのはじまり

 性的少数者のパレードは、アメリカ合衆国のニューヨーク市で1970年におこなわれたのが最初で、現在では世界各地で同様の催しが多数開かれるようになりました。中でも特に有名で大規模なものはオーストラリアで毎年2月におこなわれている「シドニー・ゲイ&レズビアン・マルディ・グラ」で、海外からの観光客も多く訪れるためその経済効果は大きく、オーストラリア政府も全面的にバックアップしています。

 日本では、1994年に東京で初めてのパレードが開催されました。このときの主催団体のもとで数回おこなわれた後しばらく中断していましたが、この間、札幌でも同様のものがおこなわれるようになり、東京では2000年になって現在の主催団体による新体制で再び開催されるようになり、現在に至っています。

 「公的な援助が特にあるわけではありません。スタッフはボランティアベースですし、パレードのガイドブックに掲載する広告費が主な収入源。継続するのはとても大変です」(東京プライド代表 砂川秀樹さん)。

 途中、何回かの一時休止を経て今夏(2010年)開催された第7回のプライドパレードには、およそ5,000人(隊列2,300人、沿道からの応援700人、代々木公園イベントの参加1,500人、その他ボランティアスタッフ等も含む)の人たちが参加しました。これは、東京でおこなわれる組織動員の無い個人参加によるデモンストレーションとしては、最大規模のものなのだといいます。

どこにでも一定数存在する性的少数者

 人間の性は必ずしも単純明快に男女に二分されるものではなく、非常に複雑で多様であることが近年のさまざまな研究により明らかになってきています。しかし、日本では、現在までこのことについての公的な人口統計調査はおこなわれていません。

 「性に関わることであるがゆえに学問的で正確な調査が大変難しい。しかし世界各国でおこなわれている複数の調査からは、どのような社会にも性的少数者は必ず存在しており、その数は全人口のおおよそ3〜5%であることがわかっています」(砂川さん)。

パレードの写真

性的少数者のシンボルであるレインボー・フラッグを手に行進。知らない者同士でも思わず手を振り合ってしまう。

 性的少数者(それぞれの頭文字をとって“LGBT”とも称される。ページ下部用語集参照)と一口に言っても実際にはさまざまな人たちがそこに含まれており、かかえている問題もそれぞれ異質なことも多いといわれます。しかし性的少数者全体に共通している問題もいくつかあります。たとえば、肉親にさえその生きづらさを理解されにくいこと。すべての性的少数者は、多数者である異性愛者の両親から生まれます。そのため両親にさえ自分のことを話せず、本来、居場所であるはずの家庭の中でさえ孤立してしまうことがあります。また、テレビ等での色物的扱いから日常的なからかいの対象となることが多く、こういったことはいじめの問題に直結しています。

 人口比から単純計算すると、性的少数者の児童・生徒は40人学級1クラスに1〜2人は存在していることになります。しかし、性的少数者の存在が想定されずに教育がおこなわれるため、性的少数者は幼いころから自尊感情を育みにくいといいます。さらに、社会に出た後は、何らかの公的な手続きをするたびに常に性別の申告を求められたり、異性同士のカップルでなければ社会的保障が受けられないなどの問題もあります。

 「先進国では、性的少数者の心の健康状態に関しての調査が盛んにおこなわれており、性的少数者ではない人に比べ自殺率が数倍高いといった深刻な状況が明らかになっています。日本でも同様な数字が明らかになりつつあります。

 暴力を伴う激しい差別事象は全く無いわけではないにしても、諸外国に比べればとても少ない。日本での性的少数者に対する差別は、より気づきにくい“社会的排除”なんです」(砂川さん)。

“ゆるやかなつながり”をもとめて

 マスコミを通じて流される“オネエ・キャラ”などの典型的なイメージとは異なり、多くの場合、実際の性的少数者は見た目でそれとはわかりません。例えば東京都の人口はおよそ1,000万人であるので、単純計算すると都内には30〜50万人の性的少数者が住んでいることになります。それにもかかわらず社会の中で目に見えない存在であるのは、差別を恐れて本人達がなかなか名乗りをあげられないことが理由の一つです。そのことがさらに差別を助長するという悪循環を招いており、こうしたことから、パレードには、性的少数者の存在を可視化して問題を社会にアピールするとともに、当事者を元気づけ、エンパワーメントするといった二つの目的があるのだといいます。

 「性的少数者というと不幸なイメージを思い浮かべるかもしれませんが、けっしてそうではない、と。確かに差別があって大変ではあるのだけど、その一方で、人生を楽しんでもいるんだよ!ということを伝えたいんです」(砂川さん)。

 実際、パレードはとても楽しげな雰囲気の中でおこなわれます。祝祭的な空間は人の心を大らかにするものですが、パレードを歩く人たちと沿道から見物する人たちとの間に小さな交流が生まれるのがそこかしこに見られました。知らない者同士が手を振り合う、ゆるやかなつながりのようなもの、そういう“あたたかさ”が時代的にも求められているように感じられます。

 「例年と違ったのは、ボランティアにも狭義の“当事者”ではない人たちがかなりたくさん参加してくれたことです」(砂川さん)。

 これも性的少数者に対する理解が徐々に広がっていることのあらわれなのかもしれません。

東京プライドの広報誌「In-Q」

広報誌表紙

無料配布しています。問い合わせは下記まで。

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外部サイトへ移動しますhttp://www.tokyo-pride.org/

用語集

Lesbian(レズビアン)
女性の同性愛者のこと。
Gay(ゲイ)
男性の同性愛者のこと。英語圏では女性の同性愛者を含むこともある。
Bisexual(バイセクシュアル)
性的指向が同性・異性、両方に向いていること。
Transgender(トランスジェンダー)
医学的な概念ではとらえきれない性別違和をもつ当事者の実態を、性同一性障害も含めて広く表現する言葉。
Asexual(アセクシュアル)
性的な欲求を持たない人のこと。
Intersexual(インターセクシュアル)
先天的に生物学上定義される男性的特徴と女性的特徴の中間的特徴をもつ人々。「間性」「半陰陽」といった言葉で知られている。
性的指向
性的対象が、同性であるのか、異性であるのか、あるいは両方であるのかという意味で用いられる。意識的な選択に基づくものではないという意味を込め、「嗜好」や「志向」ではなく、「指向」が用いられる。
同性愛
性的指向が同性に向いていること。
異性愛
性的指向が異性に向いていること。
性同一性障害(GID Gender identity disorder)
医学的な診断名で、出生と反対の性に対する同一感と、出生上の性に対する持続的な不快感(または、その性役割についての不適切感)をもち、かつ、それによって精神的な苦痛や生活上の問題を抱えている状態とされる。同性愛と混同されがちだが異なる概念であり、性同一性障害をもつ人の性的指向(異性愛であるか、同性愛であるか)は人によって異なる。
ジェンダー・アイデンティティ(Gender identity)
性別の自己意識。多くの場合、[男であるか、女であるか]のどちらかだが、[どちらでもない]あるいは[どちらでもある]という場合もある。性自認や性同一性とも訳される。性同一性障害を持つ人は、性自認が、出生時に割り振られた性別と一致しないために、性別への違和感や、苦痛、困難を抱えることになる。

東京プライド『資料:用語集』より(抜粋)

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