東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第46号(平成22年6月16日発行)

リレーTalk

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当事者自身が発信する 「HIV陽性者スピーカー派遣プログラム」

高久陽介さん

JaNP+ (日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス)
高久陽介さん

HIV/AIDSを正しく理解するためには、まず“知る”ということが重要です。HIV/AIDSの問題をもっと身近なものとして感じてもらおうと、“ごく普通の”陽性者の人たちを語り手(スピーカー)として育成し、各地に派遣している日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラスの方にお話をうかがいました。

 本当はすぐそばで生活しているはずなのに「HIV陽性者の人に会ったことがない」という人はとても多いんじゃないでしょうか。だから、良いことも悪いことも含めてHIV/AIDSが決して他人事ではないんだということをよりリアルに感じてもらうには、陽性者の生の声を聴いてもらうのが一番だと思います。

  これまでにもHIV陽性者が公共の場で話をすることはありましたが、HIV/AIDSは偏見や差別を受けやすい病気ですから、顔や名前を出すことができる人は限られていました。そのため、特定の個人のイメージが先行したり、発信する情報が偏って伝わってしまうことがあったんです。そこで私たちは、HIV/AIDSに関する客観的な理解やスピーチスキルの習得が必要であると考え、スピーカー育成のための研修プログラムをおこなっています。

  組織的にこういったプログラムを実践している例は、日本では他にあまりないようで、先日も別の疾患の患者会の方が「自分たちもスピーカーを養成したい」ということで見学にいらっしゃいましたよ。

 研修の内容は、スピーカーを志した動機の確認や、スピーチスキルの獲得などをワークショップ形式でおこなう「動機・スキル編」と、HIV/AIDSに関する基本知識の習得、多様性への理解などを目的とした「包括理解編」に分かれています。とくに「動機・スキル編」は、一泊二日かけて二日間みっちりやります。感染という経験を含めたこれまでの自分史を振り返り、それをみんなに向かって語ると同時に、他の参加者の話も聞きます。その時、意見がぶつかることもあるのですが、そこが重要なんですね。違う意見の人もいるんだということを知ることが、スピーカーとして必要なニュートラルな視点につながるというわけです。

  研修の内容はとても濃いし、自分自身を深く見つめ直さなくてはならないから、心理的にとてもハードだと思いますよ。みなさん、二日目には明らかに疲れてる様子です(笑)。けれども、たくさんの“気づき”が得られるので、仮にスピーカーにならなかったとしても、ここで得た経験が今後の人生で、必ず本人の役に立つと思います。この研修を通じて、人に話すということ、人の話を受け止めるということの両面について学ぶことができるからです。

  2005年から始めた研修へのこれまでの参加者は60人。本当はもっとたくさんの人たちに参加してほしいのですが、資金的に厳しくて、年に一回実施するのが精一杯です。その60人の中から、現在12人の人たちが実際にスピーカーとして活動しています。今のところ辞めてしまう人がいないのは、この活動を通して、自身の存在意義や社会的使命、やりがいといったものを感じることができるからではないかと思っています。

  依頼を受ける講演の規模は、マスコミに載るような大きなものから、聴講者の限られた小さな勉強会のようなものまで。依頼主も学校、病院、行政、企業など多岐にわたります。求められる内容も幅広いのですが、スピーカーもそれぞれに別の仕事を持って日常生活を送っており、それぞれに地域や家族環境、年代、性別、セクシュアリティなども多様です。正しい知識を伝えつつ、一個人としての体験も話すことができるので、聴講した人たちからは「ひとりの人の体験談として話を聞けて、HIV/AIDSをもっと身近に見ることができるようになった」といった感想が多く寄せられています。

  今後はスピーカー派遣の機会をさらに増やしていきたいと思っています。わたしたちならではの活動をこれからも続けていくつもりです。

問い合わせ先

日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラスJaNP+(日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス)ロゴ

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