東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第41号(平成21年3月27日発行)

特集

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“発達障害”とは何か、そして必要な支援とは?

最近よく“発達障害”という言葉を見聞きするようになりました。しかしその実態はあまり知られていません。また、従来からの障害者への支援施策の対象とされていなかったために、必要とされる支援が十分に行き届いていませんでした。この問題に対応するため、平成17(2005)年4月に施行されたのが発達障害者支援法です。東京都発達障害者支援センターTOSCA(トスカ)とNPO法人EDGE(エッジ)に取材しました。

発達障害のわかりにくさ

 “発達障害”という言葉は聞いたことがあっても、具体的なイメージがわきにくく、よくわからない感じがするかもしれません。理解を妨げている理由にはいくつかの原因が考えられます。一つには、発達障害が従来の一般的な“障害”概念では説明できない部分があることです。分類が多岐にわたり、種類によりまた個人により状態がさまざまなため、統一的なイメージをつかみにくいのです。また、発達障害は、とかく子どもの問題と思われていることが多いようですが、障害特性そのものは生来的なものであり、一生涯にわたります。しかし、障害特性があっても、本人をとりまく人や生活環境の在りようによっては実生活上の障害が目立ちにくく、発達障害があることに気づく時期は人によりかなり幅が出てくることになります。

 発達障害は、おおまかに、

  1. 高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群・高機能自閉症):他者の感情が読み取りにくい、社会性やコミュニケーションの困難。
  2. 学習障害(LD):学習能力の偏りが大きく、読み・書き・計算などの困難。
  3. 注意欠陥多動性障害(ADHD):集中するのが難しく多動など、注意力の困難。

 の三つに分類されます。しかし、これらのタイプのうちどれにあたるのか、実際には障害の種類を明確に分けて診断することは大変難しいとされています。障害ごとの特徴が、それぞれ少しずつ重なり合っている場合も多いからです。また、年齢や環境により目立つ症状が違ってくるので、診断された時期により、診断名が異なることもあります。

 現在、どのくらいの当事者がいるのかという客観的なデータはありません。しかし、諸説ありますが、およそ全人口の5〜10%の人たち(少なくとも20人のうち1人)がこのような特性を持っているといわれています。

成人に対する多様な支援の必要性

 東京都では平成15(2003)年1月から東京都・自閉症発達障害支援センター(現・東京都発達障害者支援センター)TOSCAを設置し、自閉症をはじめとする発達障害にかかる相談・支援事業を開始しました。このTOSCAは社会福祉法人嬉泉への委託によって運営されています。事業開始以来、当事者や家族のための相談窓口は常に埋まっている状態だといいます。相談支援はすべての年代の人たちを対象としていますが、特に成人以降の年齢の人たちが多く、昨年は相談者総数834人のうち、20〜30歳代の人たちだけで全体の5割を越しているとのことです。

 「相談内容として特に多いのが、就労を含む社会生活上の困難に関するものです。例えば、就職できないとか離転職を繰り返している人の場合、事情は様々ですが、『なぜそうなってしまうのか』が本人の立場で理解できないままに長年同じ苦労をし続けている人が非常に多いです」(東京都発達障害者支援センターTOSCA 主任支援員 石橋悦子さん)。

 成人期における発達障害がある人の生活実態はやっとわかってきたばかりで、現在さまざまな問題が山積しています。発達障害はその人によって個々の特性が強く、従来のような標準化された一律の支援になじまないという側面があります。そのため、支援の現場では未だ十分に対応しきれていないという問題があります。また、TOSCAは寄せられた相談の主訴をまとめ、必要な支援窓口へとつなぐのが本来の業務ですが、診断できる医療機関も少なく、発達障害への理解や対応のノウハウが十分にいきわたっていない機関もあるなど、橋渡し先の環境が十分に整っていないという問題もあるといいます。

 「“発達障害”という言葉だけが一人歩きしてしまっていることを感じます。まずは、関係者間において理解者を増やし、当事者のニーズに対応できる支援の土壌を作っていくことが必要だと思っています」(TOSCA石橋さん)。

教育現場での早期支援

 一方、学校教育の現場では早期支援が根付き始め、行政とNPOが協力して、柔軟できめ細かな支援をおこなっている例もあります。港区では区とNPO法人EDGEが協働して特別支援教育 個別支援室を平成17(2005)年に開設しました。

 EDGE代表の藤堂栄子さんが平成13(2001)年に、NPOを設立したのは、息子さんが学習障害(LD)の一種で、読み書きに困難を有する“ディスレクシア”を持っていることがきっかけでした。当時、ディスレクシアについて日本ではほとんど知られていませんでした。最初、息子さんの留学先であるイギリスの学校が、読み書き能力の偏りに気づき、検査を勧めてくれたといいます。

 「『原因がわかれば、あなたの息子さんに適した教え方ができるから』と。検査後も『造形能力に優れている理由がわかりましたよ』というふうに、支援が柔軟で見方もとても肯定的なんです。そういうふうに日本でもできないかなと思って」(港区特別支援教育 個別支援室 室長で、NPO法人EDGE代表の藤堂栄子さん)。

 港区の個別支援室では、子育てや教育に関わる相談、学習支援員の養成・学校への派遣・その後方援助等をおこなっています。学習支援員の活用は各自治体の裁量に任されている部分が大きいのですが、港区方式の特長は、対象の児童・生徒にかならずしも発達障害の診断がなくても、必要に応じて支援員を派遣している点です。たとえば、学級の中に発達障害児をいじめている児童がいたら、その子にも対応します。するとその児童にも何か別の事情があることがわかってきて…というふうに、さまざまな問題にきめ細かに対応することで徐々に教室全体も落ち着いてきて環境が良くなっていくそうです。

 「問題には必ず何か理由があるはず。だから、発達障害に限らず、頭ごなしにしかったりするのは絶対にやめてほしいんです」(EDGE藤堂さん)。

「能力を引き出し伸ばす支援」冊子表紙

EDGEが作成した支援員養成テキスト

 支援員を配置して二年くらいたつと、つきっきりの支援は必要なくなってきます。その児童自身が自分に合った学習のすべを身につけることができるようになるためです。しかしそれ以上に重要なのは、周囲のその児童に対しての見方が肯定的になっていくからなのだといいます。

 「“障害”だというと、とたんに否定的な感じがして、できないことばかりに目を向けがち。そうではなくて、その子なりの優れた資質に着目して伸ばしていくと良いんです」(EDGE藤堂さん)。

 本当に必要な支援とは、その人がどんなことができて、どんな魅力を持っているのかといった「“その人”に目を向ける」ということなのかもしれません。

世界自閉症啓発デーのマーク

 国連で決議された「世界自閉症啓発デー」からの一週間を日本では「発達障害啓発週間」と定めています。

東京都発達障害者支援センター TOSCA(トスカ)

注:ご利用は予約制です。都内在住の方は原則的に無料です。

URL
外部サイトへ移動しますhttp://www.tosca-net.com/
電話
03-3426-2318
ファックス
03-3706-7242
メール
tosca@kisenfukushi.com

特定非営利活動法人EDGE(エッジ)

 ディスレクシアの正しい認識、支援情報を提供しています。

URL
外部サイトへ移動しますhttp://www.npo-edge.jp/
電話
03-6240-0670、03-6240-0672
ファックス
03-6240-0671
メール
edgewebinfo@npo-edge.jp

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