東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第40号(平成20年11月26日発行)

特集

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“中高年の病気”としてのエイズ

エイズは死に直結する病…かつて、そう恐れられていた時期もありました。しかし、発症を抑える薬が開発されたため、充分な医療を受けられる先進諸国において、エイズは“死なない病気”になりました。
それにも関わらず、正しい知識が普及していないことによる誤解や偏見のために、今、様々な問題が起こっています。東京都の担当窓口と、専門病院の医師の方に話を聞きました。

エイズをめぐるさまざまな誤解

顔写真

国立国際医療センター医師の本田美和子さん

 エイズ(後天性免疫不全症候群)とはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染することによって引き起こされる病気です。HIVに感染してすぐにエイズになるわけではなく、HIVによって免疫が破壊された結果、本来健康であればならないような他の病気にかかってしまう、そういった様々な病気の一群のことをエイズと言います。HIVは多くの場合、性的接触によって感染します。そのため、成人としての普通の生活の中で、だれもが感染する可能性があるのですが、このことはあまり理解されていません。性に関わることだけに、親しい間柄でも率直に話すのが難しい…そのことがエイズについての正しい知識と理解の普及を困難にしているという側面があります。エイズは、奔放な性生活をしている人や特定の職業の人がかかる病気だ、という誤解や偏見は今でも多いといいます。

 「みなさんは『好きな人と、ふつうにセックスしているのだから感染しない』と思っていますが、全くの誤解です。感染者の方は一様に『まさか自分が…』と言います。実際に、私が診ているのは “普通” の人たちばかりです。大学教員、公務員、有名企業の社員、主婦…あらゆる年齢、職業の人がいます」(国立国際医療センター=IMCJ 医師 本田美和子(ほんだみわこ)さん)。

 現在の日本のHIV感染者の割合は20〜30代に多いため、エイズは“若者の病気”だと言われることもあります。しかし、実際にはどの年代にも一定の割合で感染者は存在しています。若年層と40歳代以上の違いは、年長者ほどエイズ発症後にHIV感染が判明する割合が高いことです。

 中高年では、閉経後に避妊の必要が無くなってコンドームを使わなかったためにパートナーからHIVに感染してしまうというケースもあります。

 「性的接触で心配なのは妊娠だけではありません。HIVは血液・精液・膣分泌液に主に含まれ、無防備な性行為で感染します。ですから、コンドームは避妊具としてだけでなく、HIV感染を予防するために必要です。他の性感染症にかかっていると、HIVにも感染しやすくなるので、それらを防ぐという二重の意味でも有用です」(IMCJ 本田さん)。

 HIVに感染してもこれといった自覚症状はなく、「まさか自分が」という思いこみで、発症するまで気付かないことが多いといいます。

 「エイズを発症してしまうと回復するのが大変だし、後遺症が残る場合もあります。なるべく未発症で発見し、治療することが重要です。都内の保健所では匿名・無料で検査できます」(東京都福祉保健局エイズ相談事業担当 山田悦子(やまだえつこ)さん)。

円グラフ:平成19年東京都。HIV感染者(エイズ未発症)とエイズ患者の年齢別報告数。30歳代が最も多い。

 1990年代になって良い薬が開発され、エイズは死に直結する病気ではなくなりました。しかし、体内のウイルスを根絶することまではできません。一度感染してしまうと薬を毎日飲む生活を一生続けなければならず、それは想像以上に大変なことです。場合によっては薬の副作用も深刻だといいます。

 「HIVに感染しないにこしたことはありません。けれども『感染したら人生の終わり』では決してない。例えば糖尿病のような、一生つきあっていく慢性疾患のようなものだと言えます。病気をうまくコントロールできれば、健康的な普通の生活を続けることができるんですよ」(IMCJ 本田さん)。

HIVに感染している高齢者の介護

 治療法が進歩したことにより、HIVに感染していても充分に長生きでき、“老後”を迎えられるようになりました。一方、高齢の感染者の介護の受け入れ先がなかなか見つからないという新たな問題が起こっています。この問題は特に地方では深刻となっていると言われています。東京は介護施設の数が多く、仮に一カ所で断られても、複数の施設に受け入れを打診することができますが、感染者が多い東京も同じ問題を抱えています。

 高齢者の介護に必要な介護保険による入所サービスでは、あらかじめ一人あたりの介護報酬額が決まっています。入所施設の中には、医療費は介護報酬に含まれた定額となっているため、治療費が高額であるHIV感染者を受け入れると、赤字になってしまう施設もあります。そのため、なかなか受け入れ先が見つからないのだといいます。こうした制度上の問題を改善しないとHIV感染者の介護は困難となります。

 また別の理由――受け入れ側の不安や誤解、偏見などを背景とした様々な理由で受け入れを断られてしまうケースもあるといいます。受け入れ側は利用者がHIVに感染しているからといって特別なことをする必要はあまりありません。HIVはとても感染力が弱く、飲食を共にするなどの日常生活で感染することはありません。介護施設では、HIVよりも感染力の強い他のさまざまな感染症にも対策を取っていますから、介護の現場でHIV感染の心配は無いはずです。にもかかわらず、介護の必要な人が受け入れを断られてしまうのは、ひとえに受け入れ側の認識不足によるものだと言えるでしょう。

 「他の利用者の方が嫌がることを理由にするという話も聞きますが、どうして他の入所者がその方のHIV感染を知っているのでしょうか? そんなことが本当にあるとしたら、それは重大なプライバシーの侵害です」(都 山田さん)。

私たちはすでにいっしょに生きている

 例えば、アメリカの人口は日本の約3倍で、年間の新規感染者数は30倍、日本の新規感染者数は年間約1,500人です。アメリカと比べると圧倒的に少ないので、やはりエイズはどこか遠い外国の話だと感じるかもしれません。しかし、日本でも、身近な知り合いの中に感染者がいるのはごくあたりまえの風景になりつつあります。

 「エイズは決して特別な病気ではありません。たとえば、取引先企業の担当者が糖尿病だからと言って取引を見合わせたりするでしょうか? それと同じくらいにエイズは普通のことなんです」(IMCJ 本田さん)。

 HIVに感染している人たちもそうでない人たちも、私たちはみなすでに同じ社会で共に生活しています。HIV/エイズのことを今一度、私たち一人一人の問題として考えるべきではないでしょうか。

冊子表紙

「エイズ感染爆発とSAFE SEXについて話します」

本田美和子著

(朝日出版社)

冊子表紙

HIV/エイズについてわかりやすく解説した『みんなの誤解』という小冊子をお配りしています。
インターネットからダウンロードすることもできます。

外部サイトへ移動しますhttp://www.asahipress.com/pdf/minnanogokai.pdf(PDF形式)

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東京都福祉保健局 エイズ対策係

電話:03-5320-4487

ファックス:03-5388-1432

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