東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第39号(平成20年9月17日発行)

特集

ここから本文です

アイヌ文化の新しい波 パフォーマンスグループ AINU REBELS(アイヌ レブルズ)

平成20(2008)年7月、G8首脳会談(洞爺湖サミット)に先立って、北海道で開催された「先住民族サミット・アイヌモシリ2008」のスペシャルイベント「先住民族ミュージックフェスティバル」において、1つのグループが注目を集めていました。その名は“AINU REBELS(アイヌレブルズ)”。首都圏に住むアイヌの若者たちが結成したパフォーマンスグループです。古式舞踊などの伝統文化と、「現代」を融合させたパフォーマンスは、何をめざしているのか。彼、彼女らの活動を通して、アイヌの人々が置かれている現状について考えてみたいと思います。

アイヌ 新しいひとつの動き

公演中の写真

DJプレイ中のDJ KANTOさん

 平成9(1997)年に制定された「アイヌ文化振興法(注1)」は、「アイヌ文化の振興とアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策を推進することにより、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現と我が国の多様な文化の発展に寄与すること」を目的としています。

 我が国のアイヌの人びとに関する施策はこの法律に基づき実施されていますが、本年、北海道洞爺湖サミットに先立つ6月6日に、衆参両院本会議で「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が可決されました。この決議は、昨年9月に「先住民の権利に関する国際連合宣言」が国連総会で採択されたことを踏まえて提案されたもので、アイヌの人びとを日本における先住民族と認めることと、これまでのアイヌ政策をさらに推進し、総合的な施策の確立に取組むことを求めるものでした。

 アイヌの人びとの問題について考えるとき、ともすれば私たちの意識は、古くから北海道を中心とするその生活圏において育まれてきた、民族としての暮らしのありようや、その歴史へと向けられがちです。しかし、いま、ともに暮らす社会の中で、アイヌの人びとが何を思い、何を求めているのかを考えることも、同じように大切なことなのではないでしょうか。

 東京にもアイヌの人びとが暮らしています。住み慣れた土地を離れ、自分のやりたいことを探して、転居してきた若者もいます。近年、そうした方たちの中から、アイヌの人びとにとっても新しい、ひとつの動きが生まれつつあるようです。

注1:平成9(1997)年5月公布、7月施行。正式名称は「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」。

楽しく、そしてかっこよく

写真:衣装をまとった9名の若者

アイヌレブルズの皆さん

 アイヌレブルズは、こうした首都圏に住むアイヌの若者たちによって、平成18(2006)年の夏に結成されました。現在の活動メンバーは15名、平均年齢は20代半ばです。これまでに、クラブパフォーマンス、イベント出演、学校などでの公演等を中心に活動してきました。伝統音楽と舞踊に、ヒップホップのリズムやラップなどに代表されるストリートカルチャーの要素をミックスし、そこに自分たちが日々感じていることなどを歌詞にして乗せています。その動きは時に激しく、彼らのメッセージを伝えていきます。

 メンバーのDJ KANTO(アイヌ語で“空”という意味)さんは、このパフォーマンスをたまたま見学し、その後グループに加わることになりました。初めは、「アイヌの伝統文化を伝える活動をしているのは年配の方たちだと思っていたので、若い人たちがアイヌの衣装を着て踊っているのを見て衝撃を受けた」そうです。

写真:ライトを浴びて踊る若者

パフォーマンスの様子
ラメトク・リムセ(勇者の踊り)

 現在では、音楽パートの中心となっているD J KANTOさんは、もともとダンスミュージックである“ヒップホップ”が大好きで、その由来を知るにつけ、アメリカの黒人たちが差別の中から音楽を通じて自分たちの表現方法を獲得していったということに感銘を受けたと言います。「外国文化は知っていても、自分のルーツのことは何も知らなかった。子どもができた時に、アイヌについて何も教えられないことに気が付き、それではダメなんじゃないかと思いました」(DJ KANTOさん)。以前はアイヌの歴史や文化にあまり興味が持てなかったけれども、最近ではそうしたことを学びつつ、活動にたずさわっているとのことです。

 こうした感覚は、アイヌ文化を「楽しく」、「かっこよく」発信していきたいという、アイヌレブルズの活動コンセプトにつながっています。

自らのアイデンティティを探して

 アイヌ文化と言ってまず思い浮かぶのは、渦巻き文様が特徴的な民族衣装やイオマンテ(神送りの儀式)など伝統的なものがほとんどかもしれません。しかし、じつはこれまでにも、伝統に根ざしつつ、現代的な手法を取り入れた表現活動をしているアイヌの音楽家やグループはありました(注2)。そういった表現は国外の少数民族出身の音楽家たちにおいてはごく普通に見られるものです。

 アイヌレブルズは、そうした先駆者たちの表現活動に多くの影響を受けながら、伝統文化に現代的なセンスとアレンジを加えつつ、自分たちのスタイルを確立しようとしています。それは、差別に立ち向かい、さまざまな方向性を模索していった先人たちへの敬意と、現代を生きる自分たちのありようを自分たちらしく伝えていこうとする、若いアイヌたちなりの自己表現だと言うことができるでしょう。その若者らしい現代的な表現に対しては、年上の世代からは賛否両論があるようです。

写真:インタビュー風景

インタビューに応える
DJ KANTOさん

 「誉めてくれる人たちと、厳しい目で見てくれる人たち両方が必要です。厳しい評価を受けたら、“今度こそ挽回してやろう”という励みになる。以前は“こんなのダメだ”とよく言われたんですが、『アイヌモシリ2008』に出演したことで、だいぶ理解してもらえた感じがします」(DJ KANTOさん)。

 伝統文化を学び、それを自分たちの表現へと高めていく行為は、自らのアイデンティティを深く掘り下げる作業です。そこに新しい意味での「かっこよさ」を見出したことも、今の彼、彼女らの活動を支えているようです。

 最後に、今後の展望について話していただきました。「言葉が通じなくても『良い音楽だね』と目で通じる。そういうところから広がる人の輪や影響は大きいと思います。音楽とかデザインでそれを出来るようになりたいですね。学校にも、もっと公演しに行きたいです。自分たちの活動が、音楽や世界の問題などさまざまなことに興味を持つきっかけになればと思います。これまでは関東近県が多かったので、ぜひ日本中をまわってみたい。外国にも行ってみたいな。いろんな国の人たちと出会ってたくさん交流したいですね(笑)」(DJ KANTOさん)アイヌレブルズの、さらなる活躍に期待していきましょう。

注2:一部の例として。“AINU ART PROJECT”はアイヌの伝統音楽と舞踊をロックのフォーマットで表現するグループ。アイヌの民族楽器トンコリ(五弦琴)奏者の“OKI”はアイヌの伝統音楽と、レゲエ、DUBなどの黒人音楽を織り交ぜた作品を発表。ムックリ(口琴)とウポポ(歌)の名手として知られた“安東ウメ子”(1932ー2004)は、OKIと組んで、アイヌの伝統音楽に現代的なアレンジを加えた作品を残している。

問い合わせ先

AINU REBELS(アイヌレブルズ)

ホームページ 外部サイトへ移動しますhttp://ainurebels.com

アイヌレブルズが出演します。

アイヌと沖縄の祭典 第15回 チャランケ祭

開催日:2008年11月1日(土曜)・2日(日曜)

飲食・物販、ステージイベントなど盛りだくさんの二日間です!

注:アイヌレブルズの出演は、11月2日(日)午後4時30分頃の予定です。

詳細はホームページより 外部サイトへ移動します http://www.charanke.com/

このページの先頭に戻る