東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第37号(平成20年3月28日発行)

リレーTalk

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百聞は一見をしのぐ!? 「ことば」で「みる」というアート鑑賞法

太田好泰さん

ミュージアム・アクセス・グループ「MAR」事務局
太田好泰さん

美術館と視覚障害者――これまで縁遠いと思われていた両者の距離を縮めるために生まれたのが、視覚に障害のある人とない人とが、“ことば”を通し、一緒に作品を“みる”という新しい鑑賞スタイルです。その活動について、ミュージアム・アクセス・グループ「MAR(まー)」の太田好泰さんにうかがいました。

 「MAR」というグループ名は「Museum Approach & Releasing」の頭文字をとったもので、「人と美術を、人と美術館を、人と人とを、もっと近づけて、開放的なものにしていこう」という意味です。

 美術や美術館というのは、高尚で堅苦しく、わたしたちの生活から遠いイメージを持たれていますね。だけど、もっと肩の力を抜いて、みんなで楽しもうよ――そんな思いがMARの出発点です。それで、美術館とは一番縁遠いと思われている視覚障害者の人たちと晴眼者が、協力して一緒に作品を「みる」ということを始めました。目だけで「見る」のではなく、ことばによるコミュニケーションを通して想像力を働かせながら心で「みる」んです。

 鑑賞ツアーでは、視覚障害者と晴眼者数人が組になります。晴眼者が作品を目で見て印象や感想について話すことが、視覚障害者がその作品を「みる」ことの糸口になります。ところがその時、晴眼者同士で思わぬ見解の違いに驚いたり、視覚障害者からの意外な質問にたじろいで言葉につまってしまったり…晴眼者は目には見えているのにまったく気付いていなかったものがたくさんあることを知らされます。視覚障害者の人に「目の見える人はちっとも作品が見えていないよ」なんて言われてしまうこともあるんですよ(笑)。そんな意外性を楽しみつつ、その場で起きるさまざまなハプニングにしなやかに応えていくことが鑑賞のコツです。

 MARの鑑賞スタイルにマニュアルはありません。ただし「作品を説明する人と説明してもらう人」のような関係に固まってしまわないように注意しています。視覚障害者と晴眼者が対等な関係を保って自由にコミュニケーションできなければ、「ことば」で「みる」美術鑑賞はうまくいきません。だから、マニュアルや固定化された関係は不要なんです。

鑑賞中の写真

MARでは、1〜2ヵ月に1回程度、さまざまな美術館で鑑賞ツアーをおこなっています。

 人と人とが出会い、お互いに何かを感じ合うことは、大きな喜びであり、人間にとって本質的なことです。障害のある人とない人が出会い、一緒に協力して「みる」こと。その体験は、社会に存在するさまざまなバリア(障壁)を飛び越え、すべての人が生きやすい社会を作る「ソーシャル・インクルージョン(社会的包括)」の考えにつながるはずです。多様な存在を認め合い、仲間として共生できる社会を実現する。それがわたしたちの目標です。

 これまで美術や美術館に縁の遠かった人たちにも意外な楽しみ方があるんだということを知ってもらい、美術や美術館のファンをもっと増やしていきたいですね。そして、障害のある人たちと一緒に魅力的な美術館を作り上げていく。それが、多様な人たちの共生できる社会を実現する一端になると、わたしたちは考えています。

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