東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第35号(平成19年9月30日発行)

リレーTalk

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“避けられる死”の減少を目指してつながる・つなげることで命を守る

清水康之さん

特定非営利活動法人 自殺対策支援センター ライフリンク代表
清水康之さん

日本の自殺者数は毎年3万人超で推移しています。一説では、未遂者はその10倍とも言われ、毎日1000人もの人々が自殺を図っている計算になります。こうしたなか、平成18(2006)年6月に「自殺対策基本法」が成立。法制定の際にも働きかけをおこなったNPOライフリンク代表の清水さんに、お話をうかがいました。

 たとえば「死にたい」と訴えている人がいたとします。多重債務から離婚・家庭崩壊に至り、人間不信でうつ病に…といったように、たいていの場合、問題は複合的です。しかし、多重債務は弁護士や司法書士、うつ病は病院や精神科医、過重労働は個人で加入できる労働組合、生活保護は役所というふうに、それぞれの問題の相談窓口は別々の機関が請け負っています。そこで、当事者が求める複数の支援をつなぐしくみが必要になってきます。私たちは、そうした相談窓口同士の橋渡しがスムーズにできるように“つなぎ役”をしています。

 自殺の一部の原因だけに、個別に対策がなされる傾向にあります。しかし、複合的な問題を抱えているケースが多いわけですから、それぞれの問題の専門家や対策が孤立していては効果は望めません。こうした連携については、国でも自治体でも取り組みが十分でないのが現状です。

 私自身が支援活動に関わることになったきっかけは、NHKのディレクターとして働いていた平成13(2001)年の10月に、テレビ番組で、親を自殺で亡くした子どもたちを取材したことでした。自殺者は「現実から逃げた弱い人」などと偏見の目で見られ、遺族は自分の体験を語ることができずにいます。つらい体験を吐き出せないと傷が癒えないまま、その思いを引きずってしまう。そのまま世間とのかかわりを断って引きこもり、最悪の場合は後追い自殺を考えたり…そんな話を聞いているうちに、遺族が救われない状況は社会の誤解や偏見が生んでいる――問題は自殺者個人にとどまるものではない、と気づきました。

 自殺は社会的な問題です。過労や多重債務、職場や学校でのいじめなど、本当はもっと生きていたかったのに、不本意な形で死を押し付けられたケースが非常に多いのが現実です。WHO(世界保健機関)が指摘している通り、自殺とは“避けられる死”。社会全体で取り組むべき課題だということは「自殺対策基本法」でも謳われています。そこで、各地で遺族の方々に体験を語っていただいたり、パネルディスカッションをおこなったりして自殺を取り巻く現状について発信する活動を始めました。社会的な意識を高め、皆さんに「これは自分たちの問題なのだ」と気付いてもらうための啓発活動です。また、学校と協力して金融知識についての教育プログラムを作ることなども検討しています。多重債務から自分を守るための知識を子どものうちから身につけてもらうのがねらいです。こうした、他であまり取り組まれていない課題は独自に提言していきますが、その実現のためにはさまざまな人達と「つながる」ことがとても重要です。

 目指しているのは、だれもが自殺の脅威にさらされることなく、生き心地のよさを感じられる社会の実現。一人ひとりが自分自身であることに満足しながら生きていける――そんな社会が来ることを、心から願って活動しています。

NPO法人 ライフリンク

ファックス:03-3261-4930

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