東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第30号(平成18年6月6日発行)

リレーTalk

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経産省の山田課長補佐、ただいま育休中

写真:山田正人さん

経済産業省商務 流通グループ 課長補佐
山田正人さん

男性の育児休業取得。男女共同参画社会では当然の権利のはずですが、実態としてなかなか増えていきません。昨年、1年間の育休を取得した経済産業省の山田正人さんが、その経験をもとに同名の本を出版しました(2006年、日本経済新聞社)。男性から見た子育てや少子化についてお話を伺います。

ただいま育休中 冊子表紙 4年前に双子が生まれた時は妻が育児休業をとったのですが、一方私は家事にしろ育児にしろ、充分に分担できていたかといえば、それはやっぱりできていなかったと思います。自分なりにやっているつもりでも、相手(妻)にしてみれば全体の何分の一にも満たない程度だったのではないでしょうか。そういう状況でしたから、3人目の妊娠がわかったとき、素直に喜べない妻の様子を見て、自分の責任のようなものを感じました。

 また、二人の仕事の状況を知っている知人からは、今回は私が育休をとったほうがいいという、まあ比較的軽い調子のアドバイスもありました。

 ただ、もう少し自分の考え方を根底的に表現すれば、自分の中に一貫してある「男女平等」の感覚を、自らの家庭において実践したいという目標が、そこにはあったと思います。

 そもそも、男性中心の労働社会から疎外されてきたのが女性ですよね。一方で、女性が中心となってきた子育てのコミュニティというのがあって、そこに男性が入ると、逆にそこから疎外された感じがしてしまいます。具体的には、本の中にも記していますが、例えば乳幼児の定期検診でも、保育園でも、それから世に出回る育児書でも、母親が育児をするという前提でできあがっている。そこに男性がいると、居心地の悪い感じがしてしまう。これはそもそも、女性にそういう役割を押しつけてきたことの結果ですよね。

 だからといって、それを改めるために、私が肩肘張って女性に負けないように育児に励んだということではありません。むしろ経験を通じて「無理しない育児」が大切だと思えるようになりました。それまでの私は、仕事を通じて、プロフェッショナルとしての自分を作り上げてきたという自負がありましたから、本気で取り組めば育児くらいできないわけがないと、まあ、たかをくくっていたのですが、実際にやってみて、仕事とはまったく違う感覚と苦労を実感させられました。また、必要なのは「正しい育児」ではなく、その子どもに合った育児であることもわかりました。そして、苦労以上に、育児をすることで得られるものはたくさんあります。それを自分なりに表現すれば、いわば「自己犠牲の喜び」に気付かされたことだと思います。自分よりも自分以外を優先する感覚。子どもたちに、自分という存在が必要とされる喜び。これは子どもの成長を通して自分自身が成長した証しだと思っています。

 社会には相変わらず、子育てや家事は女性の仕事だという認識が根強くあります。これでは少子化になってしまうのは当然です。しかも、少子化という事実に対して、実効的な対策が見出せていないというのが現状でしょう。一方で、世代により意識も違って、例えば20代の男性などには、育児休業を取ろうと思っている人も多いはずです。ですから、こうした意識変革を促すためにも、私は、男女雇用機会均等法にならって、「男女育児機会均等法」を作ったほうがいいとまで思っています。平等が家庭において追求されるとしたら、育児や家事をシェアすることがやはり基本だと思いますから。

 本についての感想は女性からのものが多いですね。みなさん「夫にも読ませたい」と。一方、男性読者からは、「自分を見つめ直すいいきっかけになった」という感想が多いです。一つ、とてもうれしかった感想として、「部下の男性からの育休申請に困惑していたが、この本を読んで快く送り出すことができました」というものをいただきました。私が書いたものがそのように読まれているとしたら、私が育児休業を取ったことも、またこの本を出したことも、意義あることだったと思えるのです。

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