東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第27号(平成17年9月1日発行)

特集

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体験!世界でたったひとつの楽器「ストリングラフィ」

「ストリングラフィ」とは、作曲家水嶋一江さんによって考案された、紙コップと絹糸を使ったオリジナルな楽器です。絹糸が奏でる不思議なハーモニーは子どもから大人まで、これまでに多くの観客を魅了してきました。当センターの11月の人権啓発行事イベントとして、この「ストリングラフィ・コンサート」公演を予定しています。この公演に先立ち、水嶋さんとストリングラフィ・アンサンブルの皆さんによるファミリー向けスタジオライブの模様や参加者の声、水嶋さんのお話も交えながら「ストリングラフィ」の魅力をご紹介します。

写真/メンバー集合写真

水嶋一江とストリングラフィ・アンサンブルのメンバー

左からKIKU・向山峰子・水嶋一江・鈴木モモ・篠原元子

ストリングラフィスタジオライブ ファミリー向けプログラム

写真1 スタジオ風景、演技の様子

(1)スタジオ一杯に張り巡らされた絹糸と紙コップ。これが世界でたったひとつの楽器ストリングラフィです。まるでスタジオ全体が大きな弦楽器になったようです。

写真2 演奏体験の様子

(2)ストリングラフィの演奏を体験しているところです。ピエロ役のKIKUさんのリードのもと「キラキラ星」を演奏。「こんな体験はもう2度とできないかもしれないから、うれしかった」と感想を話してくれました。

写真3 子ども達が実際に音を出している様子

(3)実際に触って音を出してみよう。子どもたちは、白い手袋を着けて、メンバーの説明を聞きながら真剣に糸を擦って音を出すことに挑戦しています。

写真4 スタジオでの演奏風景

(4)体全体を使って演奏している光景はダンスを踊っているように見えます。観客も参加して音楽に合わせて、手を叩いたり体を使って音と遊ぶプログラムもありました。

写真5 メンバーと観客が話し合っている様子

(5)ライブが終わった後も、観客のほとんどがその場を立ち去りがたい暖かい感動に包まれていて、メンバーの人たちと交流しています

曲目(ファミリー向けプログラムから)

アイネクライネナハトムジーク、げんこつ山のたぬきさん、大きな古時計、美しく青きドナウ、きらきら星、ミッキーマウスマーチ、世界に一つだけの花、上を向いて歩こう、さんぽ(となりのトトロ)など。

アンケートから一言

不思議な感じでおもしろかったです。学校の理科の先生がキラキラ星を演奏してくれましたが、今日の方がずっと上手でした。何回きいてもあきなさそうでいい音楽でした。(男子 小3)

きょうは、とてもいいえんそうをしてくれてありがとうございます。一つしつもんがあるんですけど、これはおうちでつくれますか? こんど、おしえてください。(女子 7歳)

鳥肌が立ちました。えっ、なんでバイオリン!パーカッション!なんでこんな素敵な音を奏でることができるんだろうとただただ感動しています。ダンスもあってアートだな。絹糸と紙コップがこんなにすごい力をもっているとは!

ストリングラフィとは?

写真:水嶋さん

水嶋一江さん

 作曲家である水嶋一江さんは、1992年の春、山形県月山の麓で行われたパフォーマンス・フェスティバルに参加していました。そのおり、森の中で木と木の間に糸を張り、森全体を楽器にして演奏してみたいとひらめいたことがきっかけで、「ストリングラフィ」は生まれました。糸電話の原理を応用し、糸の両端に紙コップを取り付けたところ、糸を擦るとコップがスピーカーの役割を果たして、思いがけない程大きな音を発しました。その音はヴァイオリンの音、人の声や動物の鳴き声、風の音など様々な音の特質を表現できます。この楽器に魅せられた水嶋さんは試行錯誤を繰り返し、より複雑でより繊細な音楽が演奏できるようになりました。またこの楽器は、広い空間に張り巡らされた糸が、まるで芸術作品のように見えることから、糸を意味する「ストリングス」と、グラフィックアーツを意味する「グラフィック」の2つのことばを合わせて「ストリングラフィ」(Stringraphy)とネーミングされました。

 楽器の進化に応じて演奏スタイルも数人でアンサンブルを組んで演奏するスタイルに発展。現在では、楽器そのものと演奏スタイルの総称を「ストリングラフィ」と呼び、オリジナル曲から雅楽、クラシック、ポップス、現代音楽、童謡、民謡など、幅広い演奏活動で、幼児から高齢者まで多くの方に喜ばれています。

子ども向けコンサート活動

 このストリングラフィは、糸電話の原理を応用していることから、理科(音とは何か)、音楽、図工(楽器の製作)、体育(身体表現)をミックスした総合的な表現方法として、教育関係者からも注目を集めています。これまでにも全国各地で子どもを対象としたコンサート、ワークショップを数多く行ってきました。子どもたちの反応について水嶋さんは、こう語ります。

 「最初は現代音楽やダンスとのコラボレーションを中心に演奏活動を行っていたのですが、子ども向けのライブ&ワークショップを始めたところ大変反響があったんです。今では子どもを対象としたコンサートも多いですね。」(水嶋)

 「子どもたちの反応でおもしろいのは、演奏を始めた瞬間ワーッというどよめきが起こることがあるんです。この楽器から出る音の意外性に驚いている反応だと思うんですけど。そういう反応があるときはこちらも嬉しくなって、演奏も乗ってきますよ。それから非常にプリミティブで、原始的な構造をもっている楽器なので、直接触れてみたいとか、作ってみたいという要望も多いですね。実際一緒にセッティングして、演奏にも挑戦してもらうワークショップもやっています。」(同)

愛・地球博にも参加

コンサートの様子の写真

愛・地球博でのコンサート

 この、8月には「愛・地球博」にも参加、その反響はかなり大きかったようです。

 「朝10時から配布された整理券はあっという間になくなったそうです。私たちは当初ファミリータイプの観客を予想していたんですが、実際は大人のお客様が大半でした。どの回も、大変熱い反応が返ってきて、私たちも興奮してましたね。万博というフェスティバルの持つパワーが乗り移ったかのようでした。本当にメモリアルなコンサートになりましたね。」(水嶋)

今後の公演活動は・・・

 子どもを対象にした活動の他にも幅広い活動を行っており、海外での公演でも高い評価を得ています。今後の活動の方向性や抱負についてお聞きしました。

 「ストリングラフィ自体が新しい楽器なので、いろいろ試してみたいですし、その可能性を秘めている楽器なんです。昨年は横浜・金沢・京都の三都市で催された国際芸術カーニバルに参加して、声明と木魚のジョイントを試みたんです。読経の声とストリングラフィの音とがマッチして、ダイナミックなアンサンブルになりました。」(水嶋)

 11月に人権啓発行事として行うコンサートでは、宮沢賢治の童話「セロ弾きのゴーシュ」の朗読とのコラボレーションという、このイベントのために創作する新しいプログラムが披露されます。子供たちの感性にうったえるだけでなく、親子で、家族で一つの世界を体験できるコンサートになりそうです。

 「この童話の中で、野ねずみのお母さんが病気の子どもを楽器の中に入れて、その振動によって病気を治してくださいとゴーシュに頼むくだりがありますよね。私たちの公演を聴いたお客様の中にもストリングラフィという楽器の中で、音のシャワーを浴びて癒されましたとおっしゃる方がいらっしゃるんです。表現者として、宮沢賢治の感性との共通点を感じて、とてもワクワクしています。」(同)

 この秋にはイギリス公演ツアーもあり、大変忙しくなりそうな様子。水嶋さんは「常に新しいことへの挑戦を続けていきたいですね。」と話しています。

 「ストリングラフィのことを言葉で説明しても、なかなかわかってもらえないんですけど、一度でもお聴きになれば、何か感じてもらえると思うんです。ですからどこへでも出かけていって、音に触れるという感動を伝え続けていきたいとメンバー全員、日々練習に励んでいます。」(同)

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