東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第24号(平成16年12月1日発行)

リレーTalk

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犯罪被害者支援の現状 早期支援の必要性とシステムの充実を目指して

(社)被害者支援都民センター事務局長
大久保恵美子さん

平成2年(1990)10月、富山市内の歩道を歩いていた大久保亨さん(当時18歳)が、後方から走ってきた飲酒運転の車にひき逃げされて死亡するという事件が発生しました。母親の恵美子さんは、かけがえのない息子の命を奪われ、その悲しみ・苦悩はいまも癒えていません。事件を通して犯罪被害者を取り巻く状況を知った大久保さんは、現在、被害者自助グループ「小さな家」を運営するとともに、被害者や遺族への支援を行う社団法人被害者支援都民センターで活動されています。今回のリレートークでは、同センターの事務局長である大久保恵美子さんに、自らの体験と都民センターの設立経緯、活動内容などについてうかがいました。

自らの体験から

 自分が被害者の立場になって最も強く思うことは、日本では、加害者の人権ばかりが重視される一方で、被害者の人権がないがしろにされているという問題です。

 事件のその後の経過や、いつ裁判が開かれるのか、加害者にどんな判決が下ったのかなど、刑事司法に関する情報は被害者側には一切知らされませんでした。私が犯人逮捕の事実を知ったのもテレビのニュースででした。

 当時、私は遺族として自分がどう生きていけば良いのかもわからず、困惑し、せめて話だけでも聞いてほしいと検察や人権擁護機関に連絡を取りました。しかし「法律にない」という言葉が判で押したように返ってくるだけでした。国に裏切られたような思いで、衝撃を受けました。

 後日、知り合いのアメリカ人弁護士が、アメリカにあるMADD(飲酒運転に反対する母親たちの会)という民間の被害者支援団体を紹介してくれました。送られてきた手紙や資料を読み、どうしても訪ねてみたいと思い、渡米することにしました。

 そこでは被害者が泣き寝入りせず、支援の必要性や理不尽な現状を社会に強く訴えていました。遺族や当事者の方たちの精力的な活動を目の当たりにして、私も日本の社会の中で被害者支援を広めなければいけない、と心に決めました。

被害者支援の歩みと支援活動

 平成3年(1991)に開催された「犯罪被害給付金制度発足10周年記念シンポジウム」をきっかけに、翌年3月、東京医科歯科大学の山上皓教授が研究室に「犯罪被害者相談室」を設置しました。現在私が所属している、被害者支援都民センターは、この「犯罪被害者相談室」が発展的に改組して平成12年4月に発足しました。

 犯罪の被害者や遺族は、身体的、精神的な打撃や喪失感などから、自分自身を支えることすら難しい状況に陥るものです。まるで時間が止まったような錯覚にとらわれ、それでも刻一刻と過ぎていく現実の時間と折り合いをつけながらなんとか生きていく…その悲しみは「心の傷」という言葉で簡単に済ませられるほど軽いものではありません。

 こうした人たちに対しては、事件の直後から、日常の生活をとりもどすためのサポートや、病院・警察等への付き添いなど、様々な支援が必要とされます。また、怒り、悲哀、恐怖、憎悪、そして遺族に多い、生きていることへの自責の念など、精神面での危機に対しても、そうした激しい感情が起きることを否定せずに受け止められるサポートが必要なのです。都民センターは、平成14年に東京都公安委員会から早期援助団体に指定されたことで、警察からの情報提供も受けて、こうした危機状況でのサポートを実施しています。

 しかし、残念ながら、いまのところこうした早期支援が行える団体は、全国で5つしかありません。今後は日本のどこに住んでいても充実した支援を受けられるシステム-すなわち、支援ネットワークの充実こそが最大の課題であると考えています。幸いにして、関係省庁でも、取り組みを進めつつありますし、また、被害者たちが長年待ち望んだ犯罪被害者等基本法案の国会上程も、近づいてきています。

 犯罪被害者になる可能性は、誰もが等しく持っているものです。これからも、被害者支援団体の存在をより多くの人々に知っていただき、安心して相談できる機関として広く認知してもらえるよう努力していくつもりです。

(社)被害者支援都民センター

相談電話:03-5287-3336
平日:午前9時30分〜午後5時30分(日・祝、年末年始を除く)
土曜:午前10時〜午後4時
ファックス:03-5287-3387
ホームページ:外部サイトへ移動しますhttp://www.shien.or.jp
(注)相談・支援無料

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