東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第20号(平成15年12月1日発行)

リレーTalk

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拉致報道を契機に激増した在日コリアンの子どもたちへの嫌がらせ

写真:松原さん

在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせを許さない若手弁護士の会
松原拓郎さん

2002年9月17日、朝鮮民主主義人民共和国が日本人拉致を認めました。拉致行為は犯罪であり、決して許されるものではありません。ところが拉致報道を契機として、在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせが激増している事実は、一般的にあまり知られていません。そこで今回は「在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせを許さない若手弁護士の会」の松原拓郎弁護士に、被害の現状と今後の対策についてお話をうかがいました。

拉致報道を契機に激増した在日コリアンの子どもたちへの嫌がらせ

 全国で在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせが発生しているという報告を受け、私たちは関東地方にあるすべての朝鮮学校(21校)に通う子どもたちを対象にアンケート調査を実施しました。それによると、昨年の9月17日以降に嫌がらせを受けた子どもは2710人中522人。じつに約5人に1人が、なんらかの被害を経験していたのです。

 回答としては「朝鮮人死ね」「朝鮮へ帰れ」「お前ら拉致するぞ」など、言葉による嫌がらせが全体の8割を占めました。それだけではなく、通学途中の女子生徒が着ていた制服(チマチョゴリ)がカッターナイフで切り裂かれるという非常に悪質な嫌がらせも発生しています。ほかにも身体的な暴力として、火のついた煙草を投げつけられた、駅のホームから突き落とされそうになった、いきなり蹴りつけられた、エスカレーターの途中で突然強く押されて転げ落ちそうになった――これでは子どもたちが安心して通学できなくなってしまうのも無理はありません。

 統計によると、嫌がらせを経験しているのは初級学校(小学校)の女子が最も多く、高級学校(高校)にいくほど数が減っていることがわかります。驚くことに、高級学校の男子に対する嫌がらせはほとんどありません。つまり、これらの嫌がらせは、明らかに弱い者を狙った行為であると言えるでしょう。

 こうした状況を受けて、各学校では自発的に安全対策が講じられました。たとえば、ほとんどの学校が集団登下校、あるいは教師や父母による送迎を実施していたようです。なかでも栃木の朝鮮学校では、教師が自動車で生徒全員を自宅から学校まで毎日送り迎えを行うほど徹底されていました。その他、チマチョゴリの着用中止、教師による学校周辺の見回り、警察によるパトロール、さらにはホームページを閉鎖したり、臨時休校にした学校もありました。

 また、アンケートでは拉致報道以降、日本人を怖がるようになったという意見が多数寄せられました。なかには「これからは朝鮮人であることをずっと隠して生きていこうと思う」という悲痛な声もあります。子どもたちに対するいじめと拉致行為は全く別の話です。そうである以上、これは国家間の政治的な問題とは切り離し、純粋に子どもへのいじめや嫌がらせが許されるのかというレベルで論じられるべきでしょう。

 私たちは今後、テレビや新聞などのメディアを通じて、一人でも多くの方に嫌がらせの実態を知っていただこうと考えています。当事者だけでなく、周囲の人々がこうした事実を意識することで、少しずつ状況は変えられると信じています。同時に「在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせを許さない若手弁護士の会」の活動で得られた情報を、各個人のネットワークを通して広げていくつもりです。そうすることによって、在日コリアンの子どもたちに対するいじめをなくし、お互いに理解し合えるようにしていきたいと思っています。

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