東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第17号(平成15年3月4日発行)

リレーTalk

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人権問題の“いま”と“これから”をラジオを通して伝えたい。

崎山敏也さん

TBSラジオ「人権TODAY」プロデューサー
崎山敏也さん

ここでは、さまざまな分野の方々に人権についてのお考えを伺います。

東京都人権啓発センターは、TBSラジオ(AM954kHz)のニュース番組『中村尚登 ニュースプラザ』の中で『人権TODAY』という番組を提供しています。毎週土曜日の朝8時20分ごろから約5分間、人権に関わる身近な問題をテーマに掲げて、ホットなニュースをお伝えしています。今回の「リレーTalk」のゲストは、同番組のプロデューサーを担当されている崎山敏也。番組の作り方から今後取り上げていきたいテーマ、そして人権問題をラジオ番組で扱う難しさなどについてうかがいました。

 人権擁護というのはもちろん大事な理念なのですが、ラジオ番組という特性上、具体的なことをとっかかりにしないとなかなか伝わりにくいという面があります。正面きって大上段に構えちゃうと、なかなか聴いてもらえない、興味をもってもらえないという難しさがある。だから、リスナーの耳にすっと入っていけるように、できるだけ身近な話題とからませながら番組を作っています。

 たとえば「児童労働を考える」というテーマを扱った時は「児童労働はいけないんだ」という意見なら誰だって言えてしまうんです。国連やアムネスティではこう言っているとか、学者はこう言っているとか。でも、実際に児童労働を強いられているのは誰なのか? そこに注目してみると、インドやパキスタンでは多くの子どもたちがサッカーボールを作らされているという事実が浮かんできます。それに対してFIFA(国際サッカー連盟)は、児童労働で作られたボールをW杯で使用しないことを決めた。そういう話題を、2002年W杯が話題になっている時期に放送しました。

 また、「聴覚障害者と携帯電話」というテーマを取り上げた時にしてもそうです。いまでは携帯電話のメールなんて当たり前の存在になってきていますが、実はメールというのは聴覚障害者の世界を格段に広げてくれるツールでもあるんです―というところから話を始めて、聴覚障害者をとりまくコミュニケーションの環境について話題を展開させていきました。

 『人権TODAY』は5分間くらいの番組なんですけれども、最初の1分間でつまらなかったらあとの4分間はもう聴いてくれなくなってしまいます。だからやはり、最初の1分、あるいは30秒くらいで「そういえば、なんか最近よく話題になってることだな」とか「堅そうな話題だと思ったけれども、こういうことにも関係あるのか」と、リスナーに感じてもらえるような番組作りをしていきたいと思っています。

 今後、取り上げる話題としては、科学技術による差別に興味がありますね。これは新しい先端技術によって生まれると予想されるものなのですが、わかりやすい例として、遺伝情報による差別があります。最近ヒトのゲノム解析が終了しましたが、今後一つ一つの遺伝子の持つ意味がわかってくると、「いついつになったら、これこれの病気が発病する可能性がある」ということが事前にわかってしまっている人に対して、生命保険に入ることが拒否されるなんていうことが考えられるわけです。重度の難病にかかることがわかってしまうと、就職差別、結婚差別ということもあるかもしれない。こうしたかたちで「先端技術と差別」というのは、これから間違いなく問題になってくると思います。というよりも、問題が起きるのを先取りして具体的に考えなくてはいけないんだと思うんです。

 それから、報道に身を置いている立場からすると、日々のニュースの中から生まれる時事的なテーマについても扱ってみたいですね。

 じっさい、時事性というものを抜きにすると、人権問題というのはなかなか正面きって取り上げにくい面があります。「差別はいけません」というのはわかっているんだけれども、民放の普通のニュース番組の中で取り上げてしまうと「なんでいまそれをやるんだ?」という印象を与えかねない。でも、『人権TODAY』という番組の中でなら、人々のあまり知らないところで進行している深刻な人権問題を継続的に扱っていくことができます。そうしたところに、この番組の価値があると思うんです。だから少しでも多くの方に番組を聴いていただいて、人権について関心をもつきっかけになってくれたらいいな、と考えています。

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