東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第16号(平成14年11月20日発行)

リレーTalk

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「チャイルドライン」を通して子どもたちの“こころ”を聞く

写真:福田房枝さん

チャイルドライン支援センター常務理事・NPO法人子ども劇場全国センター専務理事
福田房枝さん

ここでは、さまざまな分野の方々に人権についてのお考えを伺います。

「チャイルドライン」をご存知ですか? 子どもたちが誰かと話したい時、困った時、悩んだ時、どんなことでも話せる電話――それがチャイルドラインです。子どもたちが誰にも話せないまま抱え込んでいる問題の背後には、私たち大人が作り上げた社会の歪みが透けて見えます。そこで今回は、チャイルドライン支援センターの常務理事、そしてNPO法人子ども劇場全国センターの専務理事を務める福田房枝さんに、子どもたちを取り巻く環境と現代社会の問題点についておうかがいしました。

 チャイルドラインは、話す内容も切るタイミングも、すべて子どもたちの自由です。プライバシーを尊重しつつ、電話の受け手はささやかな話相手になることもありますし、ひたすら聞き役に徹することもあります。目的は大人の価値観を子どもたちに押しつけることではなく、子どもが自らの力で問題に立ち向かえるように少しでも支えてあげることですから。

 最近、子どもたちの声を通して思うのは、大人を心から信じられないんだなっていうことです。本当は信じたいけど、信じられない子が多い。それは彼ら、彼女らの声を“ちゃんと”聞いてあげられる大人が少ないからです。子どもたちは、学校内や家族内の人間関係が希薄になっていることに対して傷ついているのです。つまり問題の核は子どもたちにあるのではなく、むしろ大人たちにあるということ。それは私自身、30年以上「子ども劇場」の活動にたずさわってきた経験からもよくわかります。

 なぜそうなってしまうのか? 原因のひとつは、自分との対話ができていない大人が多いからでしょう。自分とのコミュニケーションがとれない人が、他人と、まして子どもとうまくコミュニケーションをとるのは非常に難しいですよね。結果として、人と人とのつながりがどんどん希薄になってしまう。だから大人たちはいますぐ“自分への無関心”をやめなければいけません。大事なのは毎日訪れる一瞬一瞬の出来事を“感じること”です。そして自分自身の心の動きを見つめてみる。自分について考えてみる。そこで初めて、子どもたちの「ことば」の奥にある「こころ」が聞き取れるようになるのだと思います。これからはそうやってお互いに共感し合い、尊重し合いながら、大人も子どもも一緒に社会を作っていくべきでしょうね。そして理想は、子どもを一人の市民として扱うような社会だと考えています。

 こうして子どもたちの声を社会へ発信し、世の中に問うことも支援センターの役割です。今度の11月30日に、私たちは『チャイルドライン全国フォーラム2002』をお茶の水女子大学で開催しますが、そこではとにかくチャイルドラインの存在を一人でも多くの方に知ってほしいと思っています。新聞やテレビで報道されている以上に、子どもたちを取り巻く環境は深刻です。見た目はケラケラと笑っていますが、その胸のうちには誰にも言えない深い闇が潜んでいます。だからこそ、まずはその実態をありのままに“感じて”ください。そして私たちと一緒に考えていきましょう。

チャイルドライン全国フォーラム2002

チャイルドラインを全国へ!廃校舎跡で奮闘中の支援センター

 イギリス生まれのチャイルドラインは、1998年に“せたがやチャイルドライン”として日本で初めて開設されました。その後、1999年1月にチャイルドラインの全国的な普及を目指して「チャイルドライン支援センター」が発足。全国各地でセミナーや講演会、シンポジウムなどを実施しました。現在までのわずか3年間で、チャイルドライン設立の動きは26都府県・48団体に広がっています。また、支援センターの事務所は、合計23のNPO法人(特定非営利活動団体)が集まる「みなとNPOハウス」の中にあります。ここは港区六本木の旧港区立三河台中学校の廃校舎をそのまま利用したというユニークな施設。この試みは、民間NPOを区政のパートナーとして位置づける港区が、廃校舎の有効利用をNPO側にもちかけることで実現しました。

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