東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第15号(平成14年9月20日発行)

リレーTalk

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職場で深刻化する「パワー・ハラスメント」

岡田康子さん

株式会社クオレ・シー・キューブ代表取締役
岡田康子さん

ここでは、さまざまな分野の方々に人権についてのお考えを伺います。

「パワー・ハラスメント」という言葉をご存知でしょうか? これはおもに職場の雇用関係を利用した強制や嫌がらせを指す言葉で、たとえば上司が部下に対して度を越えた強い物言いをしたり、時間外の飲み会を強要したりといったことが当てはまります。もともとこの造語を生み出したのは、企業のメンタルヘルス相談室の運営を請け負っているクオレ・シー・キューブという会社です。今回は同社代表取締役を務める岡田康子さんに、その実態についておうかがいしました。

 私が企業内のメンタルヘルス相談やセミナーを始めてから、すでに11年ほど経ちますが、雇用均等法の改正後、女性からの相談を想定してセクハラ対策の相談窓口を設けました。ところが、最近になって若い男性からの訴えが目立つようになってきたんです。内容は「上司から嫌がらせを受けているのですが、これはセクハラにはならないんですか?」とか「上司に言いたいことが言えない」といったものですね。こうした相談がきっかけとなって、私たちクオレ・シー・キューブは「パワー・ハラスメント」という言葉を生み出しました。対象は上司と部下という関係だけにとどまらず、社会的な勢力や組織の規範・慣習といった「パワー」を使って行われる場合にまで広く及びます。実際の職務とは関係ない、または適正な範囲を越えて嫌がらせの言動を繰り返し与えること。それが「パワー・ハラスメント」の定義です。

 私たちは「セクハラ」に対して「パワハラ」と呼んでいるのですが、その実態を調査するために無料の電話相談やFAX、ホームページなどでアンケートをとってみたんです。結果として昨年9月末から4日間で相談が44件、意見24件、アンケートは35件寄せられており、「パワハラ」に対する関心が高いことがわかりました。具体的な事例としては「時間外の交流会や親睦会などの参加を強制され、もし参加しないと職場での立場が悪くなる」「宴会に出席して嫌な思いをしたことが心の傷になり、結局会社をやめてしまった」「時間外の雑用を強要されるが、契約社員という立場なので断れずに嫌々やっている」などです。全体の傾向としては病院や学校、役所など、権力構造がはっきりしている職場からの相談が多かったですね。また、「パワハラ」を受けている本人だけでなく、その家族からの訴えがあったことも今回の特徴として挙げられるでしょう。特に男性は「家庭を支えなければ」という意識から悩みながらも、簡単には会社を辞られず、誰にも言わずに我慢しているという事なのでしょうか。

 折からの不況が続く今日、労働環境は非常に厳しくなっています。と同時に、以前は通用した「職場の常識」が世代間で微妙にズレてくるという現象が起きているのです。実際に今回の相談でも、職務上必要と思われる注意や叱責でさえ「耐えられない」と訴える若者の例があった一方で、管理職側からは「そういう若者を甘やかすと、日本の将来はない」という意見も寄せられていますから。こうした例からもわかる通り、「パワハラ」を定義する「適正な範囲を越えた嫌がらせ」の線引きは、なかなか困難です。それでも男性正社員中心の時代からパート・契約社員・女性・外国人・障害を持つ人なども一緒に働く時代へと変化するなか、より働きやすい職場を作っていくためには「一人ひとりを、人として尊重する」ことが必要になってくるのではないでしょうか。

  現状ではまだまだ法的な規制もないため、問題解決のために被害者は「NO!」とはっきり言うことくらいしかできず、自分で自分を守るしかないわけです。今後は「セクハラ対策」と同じように声を上げていくことによって波紋を投げかけ、社会の認識を少しずつ変えていきたいと私は考えていますし、そうなるように期待もしています。

昨年に続く第ニ弾!! あなたの声が職場を変える

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