東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第14号(平成14年6月24日発行)

リレーTalk

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差別のない職場づくりが活気のある企業を生み出す

中野麻美さん

派遣労働ネットワーク代表、日本労働弁護団常任幹事
弁護士 中野麻美さん

ここでは、さまざまな分野の方々に人権についてのお考えを伺います。

東京都では毎年6月を「就職差別解消促進月間」とし、さまざまな啓発活動を展開しています。同和地区出身者、女性、障害者、高齢者の人々などに対する就職の機会均等を図るため、私たちはどのように対処していけばよいのでしょうか。今回は、とくに女性の労働問題に詳しい中野麻美さんにお話をうかがいました。

 「働く」ということは、経済的な生活の基盤を形成するだけではありません。その人の人生の発展にかかわる重要な問題で、「生きる」ことそのものです。その第一歩である雇用の入口、つまり採用の段階で、差別=人権侵害が撤廃できていないことは、重大な問題です。しかも最近では、ますますシビアになっています。男性は45歳、女性は35歳になったら就職口が大きく制約されていますし、障害者の方には正社員の枠がほとんどありません。女性の場合は表向きは、「女性だからといって排除しない、個人の能力や適性で判断する」といっても、実際には、「今年はとらない」という企業もあります。また、「若い人優先」、「容姿優先」といった差別的な物差しによる選別もなくなっていません。同和地区出身者に対する就職差別も問題です。1998年大阪のリサーチ会社が同和地区出身者の情報を企業に有料で提供したことが発覚して問題になりましたが、こうしたことは、いかに差別が根強く、水面下では当たり前のようにまかり通っているかを示すものです。

 派遣という働き方が解禁されてからは、写真や住所、電話番号、家族関係といった個人情報がFAXで流されて社員の好奇な目にさらされたり、若さや容姿で、派遣が決まり35歳以上では、登録も受け付けないといった差別に関する相談が増えました。契約以外の社員の嫌がる仕事を押し付けられる、賃金や労働時間などの不利益変更、契約期間の短期化や契約打ち切りといった問題もあります。

 こうした苦情を解決する取り組みを進めるなかで、1986年に設立したのが「派遣労働ネットワーク」です。派遣スタッフが派遣先と交渉する力をつけるために、情報を提供し、一緒の目線に立って「どうすれば問題を解決できるのか」を考えながら活動を続けています。就職差別を見ていると、結局、企業はとても不合理で非効率的なことをやっているという結論に落ち着きます。企業という組織は、働いている人の能力を活かして成り立ち、発展することができます。その力をフルに引き出すためには、差別をなくす以外にないんですよね。高齢者だから、女性だから、同和地区出身者だからなどという理由で差別することは、人間の可能性を奪っていることと同じです。そのことにさえ気づかないのは、なぜ人権が大切なのかを企業として深め、自分のものとしていく努力があまりにも少ないからでしょう。だから、こうした問題を考えるきっかけとなる情報に触れることが必要なのです。

 いま私は、東京都人権啓発センターが提供しているラジオ番組「人権TODAY」に毎月出演しています。この番組では、人権にかかわるいろいろな話題を取り上げているのですが、より多くの情報を、より広く都民の皆様に伝えていくためにもこういう番組がもっとたくさんあっていいでしょうね。その意味でも、東京都人権啓発センターの役割は、今後ますます重要になってくると思います。

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