東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第13号(平成14年3月18日発行)

特集

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ホームレスは働く意欲も体力も失っていない

昨年8月、東京都が行った「路上生活者概数調査」で、23区内には路上生活者が5,675人いることが分かりました。今回は山谷地域でホームレスと呼ばれる路上生活者の自立支援を行ってきた「NPO自立支援センターふるさとの会」の水田恵さんに、ホームレスの自立支援の大切さを伺いました。

顔写真:水田さん

「NPO自立支援センター
ふるさとの会」代表理事
水田 恵さん

「ふるさとの会」の活動

 以前から山谷には出稼ぎに来ている日雇い労働者がたくさんいて、その中には高齢者も大勢いました。バブルの頃、日雇いの仕事は多いにもかかわらず、高齢者の仕事はなかなかなかったんです。彼らは普通ならリタイアする時期に来ているに、それもできない。長い間、家族との音信も途絶えているという状況でした。

 ”ふるさとに帰りたいのに帰れない。それなら、ここをふるさとにして生きていこう“ということで生まれたのが、「ふるさとの会」です。東北から出て来ている人が多いので、東北の食べ物や民謡を楽しむ機会を1カ月に1度つくろう。共済組合をつくろうということで始まりました。

 ”ふるさとに帰りたいのに帰れない。それなら、ここをふるさとにして生きていこう“ということで生まれたのが、「ふるさとの会」です。東北から出て来ている人が多いので、東北の食べ物や民謡を楽しむ機会を1カ月に1度つくろう。共済組合をつくろうということで始まりました。

 その後、バブルがはじけて、ホームレスの方も増え、10年近く、炊き出しや相談活動を行っていく中で、それだけではいけないのではないかと思うようになりました。やはり、地域の中、社会の中で、彼らがもう一度暮らしていけるような条件を整え、自立を支援していかなければいけないのではないかと。それで、「高齢者路上生活者自立支援センター」を設立して、マンションの一室を団らんと食事の場として提供する「リビング提供サービス」を開始したのです。その事業として、東京都地域福祉財団から助成を受けました。その後、疾病を持った高齢の男性などが地域社会で自立するための中間通過施設「ふるさと千束館」を設立しました。

 99年に法人格を取得し、「NPO自立支援センターふるさとの会」として、毎日120位の人の元ホームレスの方を対象に安否確認やデイサービスなどの自立支援、就労支援などを行っています。昨年、6月に設立した「ふるさとあさひ館」は、1階では要介護の単身の高齢者の介護を行い、2階はホームヘルパー2級を取得することによって、就労、自立をめざす男性の入所施設となっています。

ホームレス問題には家族問題が大きく関係している

  今こそホームレスの方たちの自立を支援するシステムが必要なのです。そして、彼らに一番必要なものはメンタルケアです。一部のホームレスの方たちが極貧の姿を公衆にさらけだした生活によって、自分の姿を見せまいとするバリアをつくろうとされます。その結果、精神の疾患、アルコール、薬物依存などが挙げられますが、最も大きいのは心の問題です。彼らに共通しているのは家族、友人、会社、地域、社会に見捨てられたという思いなんです。ですから、「社会はあなた方にも窓口を開けているんですよ」というメッセージを送り、信頼関係を築くことが大切です。相談できる人がいれば、その後は自分から行動ができるようになります。実際、過去に我々がアパート保証をした人で、ホームレスに戻った方は1人もいません。

 ホームレスの方の多くは就労意欲も体力も持っています。私たちが見てきた限りでは、一般的にホームレスという言葉から連想する汚い、ダンボールなどを抱えている、どこでも寝るという人は、全体のほんの5〜10%に過ぎません。では、なぜ、働く意欲のある人がホームレスになったかといえば、それは失業が原因であります。リストラされて、すぐにホームレスになるわけではないんです。例えばリストラされたことを隠して、会社に行っているふりをしていたことが家族にばれ、結局、家族が崩壊してしまうというケースが多い。家族で一緒にリストラという現実を乗り越えることができれば、ホームレスにはならなかったかもしれません。一昨年に調査が行われ、昨年3月に発表された白書「東京のホームレス」によれば、ホームレスの6割がかつて安定就労していた人たちです。以前のように、日雇い労働者からホームレスになったケースは減っているんです。

 僕たちがやっているホームレスの支援事業に対して、批判の声もあります。でも、僕は同じ空気を吸っている人が、極貧の姿を公衆の面前にさらしていることを見て見ぬふりをするような人間になりたくない。彼らの生活の再建を応援しない社会が恥ずかしいと思っています。それに彼らを放置したまま、いい街づくりができるわけがありません。

 そして、気づいてほしいのは、彼らを支援することが街の活性化にもつながるということです。彼らの中には65歳以上の介護保険の受給者がたくさんいますから、彼らにサービスを提供するような新しい事業をつくりだすことで収益も得られます。新しい事業に従事する20〜30代の若い層を呼び寄せれば、活気もでるはずです。こうした柔軟な発想を受け入れていただくためにも、まず、ホームレスの方についての正確な情報を知ってもらい、偏見をなくしてほしいと思います。

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