東京都人権啓発センター

TOKYO人権 第10号(平成13年6月29日発行)

リレーTalk

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アイヌの文化継承のために

写真:長谷川さん

ここでは、さまざまな分野の方々に人権についてのお考えを伺います。

レラの会
長谷川 由希さん

今回は首都圏に住むアイヌの人達が集まり、文化の継承をめざして活動している「レラの会」の長谷川由希さんにご登場いただきました。

 毎年、7月にスイスのジュネーブで行われる国連の「先住民作業部会」に、1997年からアイヌの仲間や国内のNGOと参加しています。これは国連の下部組織でありながら、毎年、千人以上の参加者があるという大変活発な部会です。カナダのイヌイット、ネイティブアメリカン、北欧とロシアのサーミ、タイやフィリピンの山岳民族など、たくさんの先住民族が集まります。日本ではアイヌの他、沖縄からも参加しています。

 会議はあらかじめ決められたメインテーマに沿って、自分たち民族の現状を話しながら進められます。私たちはアイヌの人達の文化の継承と権利回復を求めている立場から、どんなテーマの時でも必ず盛り込んでいることがあります。それは97年に制定されたアイヌ文化振興法(アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律)についてです。以前にこの会議で日本政府は「アイヌの人達は、この法律のおかげで文化を守ることができた」という内容の報告をしました。けれど、私たちはこの法律に満足していません。「アイヌ文化振興法は、アイヌ文化だけを対象にしている。アイヌが自分たちの文化をしっかりと学んで、受け継いでいけるような法律にしてほしい。権利という言葉が含まれていないのが、この法律の問題点です」と毎年、訴えてきました。

 昨年のメインテーマは「若者と子ども」で、私は「自分たちがアイデンティティーを模索している」という話をしました。また、「教育」がテーマだった一昨年は、「アイヌであってもなくても、学校教育の中でアイヌやその文化について学ぶ機会を作ってほしい。自分達の文化を学びやすい環境を作ってほしい」と話しました。

 この会議では何百人もの人が発表をして、それを元に先住民族の現状をまとめた報告書が作られます。これは国連の人権委員会に向けた正式な国連文書になります。そこに少しでもアイヌの現状が書き込まれ、理解されることが私たちの目標です。すぐに結果が出るようなものではありませんが、人権委員会をはじめとする国連の各機関がアイヌについて考えるきっかけになれば、と思って続けているのです。

 私はアイヌ料理店「レラ・チセ」で働きながら料理を学び、「レラの会」でウポポ(歌)やリムセ(踊り)、言葉などを学んできました。私がアイヌの文化を学び、継承していくことに、こんなに一生懸命になったのは、アイヌの仲間やさまざまな人との出会い、共に行動することが自分を楽しませることだったからだと思います。そして、いろいろな世代の人に学んだり、教えたりすることは、自分の存在を確認することのできる貴重な体験です。

 今、「レラの会」のつながりで、高校や大学でもウポポやリムセを披露したり、歴史について話したりしています。アイヌでない人でも、アイヌの踊りなどの文化に興味をもっている人がたくさんいます。これからもアイヌの文化継承と権利回復に力を注ぎたいと思います。

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