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TOKYO人権 第13号(平成14年3月18日発行)
特集1 「相手をリスペクトすることから始めよう」 −セイン・カミュさん−
今回、ご登場いただいたのは、4月スタートのNHK連続テレビ小説「さくら」で、主人公のフィアンセ役を演じているタレントのセイン・カミュさん。「さくら」、はハワイで生まれ育った日系四世の主人公が飛騨高山で自分のルーツである日本の文化に触れ、成長してゆく物語ですが、セインさん自身も子ども時代に来日してから、さまざまな経験をしてきました。そんなセインさんの目から見た日本の問題点や外国人問題を語っていただきました。
お互いの文化を理解しようとする心が足りない
■セインさんは日本で生活されるようになって20年近いそうですが、初めて来た頃のエピソードなどを聞かせてください。
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セイン・カミュ(せいん・かみゅ)さん
1970年生まれ。アメリカ・ニューヨーク出身。アメリカのオフストラ大学で演劇を学んでいたが中退し、日本へ再来日。現在、ドラマやバラエティー番組などで幅広く活躍。4月スタートのNHK連続テレビ小説「さくら」に出演。 |
■いろいろな国で生活された経験のあるセインさんにとって、日本は住みやすい国なのでしょうか。
一番長く住んでいる国ですから、僕にとっては親しみやすい、居心地のいい場所です。それは日本語がしゃべれる、文化も分かる、どこに行っても自然にふるまうことができるということも大きいと思います。でも、僕の外国人の友達の多くは、溶け込むのが難しい国だと感じているようです。
最近は国際結婚が増えてきましたし、国際的な恋愛も多いから、かなりドアが開かれてきたようにも思えるんですが、友達は「ここは日本だから、日本語をしゃべれ」なんて言われることがあるそうです。僕も年配の方の中には、いまだに外国人コンプレックスを持っている方が多いと感じます。
そういう考え方の人がいるうちは、本当の意味での交流というのは難しいんじゃないかなと思いますね。日本人の側に「そう簡単には受け入れないよ」という意識があることで、外国人の側には早く受け入れてもらおうと焦って、がんばりすぎたり、力みすぎてしまっている人もいます。そんな雰囲気が余計に受け入れにくくさせてしまっている気もします。でも、他の文化を受け入れたからといって、自分たちの文化を捨ててしまうわけじゃないでしょう。日本には日本の”味“があって、簡単にはなくなりません。それを守りながら、視野を広げて、違う文化を受け入れていく。もっとお互いの文化を理解しよう、尊重しようとする心がなきゃダメじゃないかなと思います。
僕だって、日本のことを100%理解できているとは言えない。例えば本音と建前というか、”言わなくても分かる“という部分は、やっぱり難しいですね。アメリカなんかは、イエスかノーかはっきりしろっていう社会ですから、「嫌なら何でその場ではっきり言ってくれなかったの?」と思うことがあります。
すごく日本人に近い所まで来ている気はしますが、日本人じゃないということで、いつまでも踏み込めない部分があるような気はしています。でも、それでいいと思うんです。100%日本人になれと言う方がおかしいし、なりたくない。西洋、東洋両方のいい所を持っていることで、自分のキャラクターができ上がっていると思うんです。日本人と外国人、両方のスタンスから物事を見ることができるのが強みだと思っています。
小さい頃から日本語がしゃべれる、日本のことが分かる外国人ということで注目をあびてきて、それが嫌だったこともあったけれど、そのおかげでこういう仕事をさせてもらっているという部分もあるわけです。だから、日本人と外国人お互いが、もっと気軽に交流ができる手助けができればと思っています。今年、都内に子どものための英会話スクールを開校したのも、そういう理由なんです。
なぜ、失敗を恐れるのか不思議です
■テレビ番組の企画で街頭インタビューを続けられていますが、街に出て感じるのはどんなことですか。
”恥ずかしい“というのが、日本人の行動に大きく影響しているキーワードじゃないかと思うんです。まちがえるのが恥ずかしい、世間体を考えると恥ずかしい、人にどう思われるか考えると恥ずかしい、みんなと違うと恥ずかしい……。でも、僕は「恥ずかしくたっていいんじゃん」って思うんです。そもそも日本には”失敗は成功のもと“ということわざがあるぐらいなのに、どうしてそれを恐れるのか不思議ですね。
最近、街で人にぶつかっても「すみません」「ごめんなさい」の一言も言わない人が多いですよね。そういう所からコミュニケーションが始まるのに。結局、”恥ずかしい“から、街で人にぶつかっても、自転車が倒れていたり、困っている人をみても、知らんふりしてしまうのかなと。でも、知らんふりすることの方がよっぽど恥ずかしいですよ。
先日も空港でチェックインした後、明らかに道に迷っているおばあさんがいたから、まずバスに乗って、その後、飛行機に乗る所まで一緒に行ったんです。でも、他の人は知らんふりだったんですよ。そのとき、乗務員の方が「助けていただいてありがとうございました」と丁寧にお礼を言いに来たけれど、僕にとってはわざわざお礼を言われることの方が恥ずかしいんです。別に正義感とかそういうことではなくて、当たり前のことですから。でも、そういう思いやりを持つとか、相手を気づかうという、いい部分がどんどんなくなってしまっていると感じます。ぼくが日本に来てからの20年足らずの中で、「最近、ひどいな」と思うぐらいですから、悪い方に変わるスピードが速すぎますよ。
まず、自分を信じて、好きになろう
■昨年の12月人権週間に当センターが提供したラジオ特別番組の中で、「エイズについて正しい知識を知ってほしい」「人の立場に立って物事を考えよう」と一生懸命語られたのが印象的でした。
昨年12月に文化放送の「セイヤングスペシャル」に出演させていただきました。ああいうふうにリスナーが抱えているいじめやDVなどの悩みを通して、若い人と人権の問題をまじめに語り合える番組がもっとあってもいいと思います。僕がエイズについて考えるようになったのは、1990年にニューヨークで募金集めのために開催された「エイズマラソン」がきっかけです。ボランティアとして参加させてもらったんですが、僕自身、HIVポジティブの人について誤解していた所がたくさんあることに気づかされたんです。
一番恐いのは正しい知識を知らないで、むやみに恐れ、差別することです。今はこれだけたくさん正しい情報があるのだから、それを知らないで恐れているだけの人に、まわりから正しい知識を理解させるような社会にならなきゃいけないと思いますね。
結局、戦争などの争い事というのも、相手について知らないまま恐れるということから始まっている気がするんですよ。やはり、お互いを同じ人間としてリスペクト(尊敬)するというスタンスを忘れてはいけないと思います。そうすれば、今年、東京であったホームレスの方に対するいろいろな事件なんかも起こらなかったはずです。
相手を尊敬し、大事に思えるようになるには、まず、自分を信じて、好きになることが大切です。日本の若い人に「夢は?」と聞くと、高校に受かるとか、大学に受かるとか目先のことしか出てこない。でも、現実味のない夢でもいいから、自分ならそれを実現できると信じて、自信を持って進んでいってほしいと思いますね。それが自分を好きになるということにつながるはずです。僕は「人の立場に立って物事を考える」ということを意識してやっているわけではありませんが、それが無意識にできているのは、僕が自分を信じて、自分の夢に向かって進んでいるからだと思います。
■今後、セインさんが仕事を通して実現したいのはどんなことですか。
日本には障害者の方たちが出演できる番組が少ないですよね。以前、ある番組に出たとき、僕が車イスに乗っている方にマイクを向けたら、スタッフに止められたんです。バラエティー番組で障害者の方を映すのはまずいからと。そのときは僕もキレましたね。「この番組は五体満足の人たちによる、五体満足の人たちだけが見るための番組なのか。視聴者にも車イスの人がいるはずだし、そもそも、完璧な人なんているのか」と。撮影した後に、いろいろと検討した上でカットするなら別にいいんです。でも、そのチャンスすら与えないのはおかしいでしょう。彼らは同じ人間で、たまたま車イスに乗っているだけなんですから。
高校生の時、隣の学校に車イスの友達がいたんですが、彼は頭の回転が速くて、めちゃくちゃ面白いヤツなんです。他にも彼みたいにユニークな発想を持ってる人もいるはずなのに、車イスに乗っているというだけでカットするというのは許せない。もしかしたら、すごく面白い話が引きだせるかもしれないじゃないですか。この件は、いまだに納得がいかないですね。
他の国ではありえないですよ。例えば「セサミストリート」だってそうでしょう。あんな小さな子ども向けの番組でさえ、足の不自由な子や耳の聞こえない子が「ハーイ、ビッグバード」と、楽しそうに番組に参加しているんです。残念ながら、日本のテレビの世界は今も変わっていませんけれど、いつか障害者であるとか、ないとかに関係なく、たくさんの人にインタビューをしてみたいですね。
●セインズスクールの問い合わせは
電話 03−5771−6105 ホームページhttp://www.thane.co.jp