TOKYO人権 第57号(平成25年2月28日発行)

作者と読者−−他者が歩み寄る場所としての文学
ホームレスの人たちの文芸コンテスト「路上文学賞」

「路上文学賞」は、現在ホームレス状態にある人、またはその経験者を対象に創設された文学賞です。ホームレスの人たちが世に放つ文芸作品は、私たちにどんなことを気付かせてくれるのでしょうか。

 “ホームレス”と聞くと、ネガティブなイメージを抱く人が多いかもしれません。しかし、そんな偏った見方を覆すユニークな催しがあります。それが、今年で3回目となる「路上文学賞」。ホームレスの人たちが創作した文芸作品のコンテストです。路上に生きる人々の撮影をライフワークにしている写真家の高松英昭(たかまつひであき)さんと、大江健三郎賞受賞の小説『俺俺』の映画化で注目を集める作家、星野智幸(ほしのともゆき)さんが、「慈善活動ではなく、誰もが楽しめる“路上の文化祭”をやろう」と共同で企画しました。作品の選考は星野さんがおこない、冊子にまとめ無償配布します。

 星野さんはこの文学コンテストを通して、読み手のホームレスの人たちに対する思い込みを壊したいと思っています。

写真:星野智幸さん星野智幸さん

 「路上の生活も、いろんな生活のあり方のひとつだと知ってもらえたら。誰でも、どんな時でも、生活を楽しんで構わないはずだし、その権利がある。どの人の人生も重みは同じですよね」(星野さん)。

 ホームレスの人たちは世間の冷たい眼差しを恐れ、いつも他人を気にして生活しています。そのため、相手の期待に応えようとして、過剰に典型的な話をする傾向があるといいます。しかし「自分に誠実に書けば、それが文学になる」と考える星野さんは作品の募集にあたって、他人の目を気にせず自分の言葉で書いてもらうことに一番気を配ったそうです。

 2010年に募集した第1回は、30名ほどから100近くの作品が寄せられました。2011年の第2回にはさらに増え、中には原稿用紙30枚分もの大作も。それらの作品は、どれも個性的で読んでいて楽しかったと星野さんは話します。たとえば、第2回の文学部門で奨励賞を受賞した作品は、

 自信をまつ

たった5文字の作品で、これほど短いものは、なかなか珍しいかもしれません。

 「受け身なのが面白いですよね。腹が据わりきっていて、むしろこの時点ですでに自信があるんじゃないか?とか、わずかな字数なのに、いろいろなことを考えさせるところがすごい」(星野さん)。

 作品をまとめた冊子には、手書き原稿がそのまま掲載されている点も特徴的です。原稿用紙代わりのチラシの裏側から表の柄が透けて見え、書き手の日常が感じられたり、存在しない漢字を新たに発明する人や、書き間違えるたびに訂正印を押す几帳面な人などもいて、書き手それぞれの個性が楽しめます。

 中には、ホームレスの人たちの間でしか使われない、“路上の業界用語”を用いた作品もあります。こうした言葉は使いすぎると内輪にしか分からないものになってしまいますが、星野さんは、どの応募作品からも、見知らぬ人へ届いて欲しいという気持ちが感じられたといいます。

 「文学は、書き手と読み手が互いに一歩ずつ歩み寄って初めて成り立つもの。その場所は誰のものでもなく、どんな人が来ても良い場所です。だから、“文学”には“ 路上”が似合うんです」(星野さん)。

 個性的で面白い文学作品に触れる気軽さで、作品集を手に取ってみませんか。そうすればあなたも、たくさんの人が行き交う路上文化祭の参加者です。

インタビュー/鎌田 晋明(東京都人権啓発センター 専門員)
編集/小松 亜子

第3回「路上文学賞」作品募集概要
応募締切 平成25年3月31日 / 受賞作発表 平成25年4月15日
川柳部門を廃止し、文学部門のみ募集。1人1作品4,000字以内。
大賞 50,000円(1名)、佳作 5,000円(5名)

Facebook内「路上文学賞」公式ページ
https://www.facebook.com/rojo.bungaku
(注)各種お知らせ、作品集の入手についてはこちらをご覧ください。

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